新興企業のワンダフル、創業1年数ヵ月で評価額50億ドルの快進撃 〜 大企業向け人工知能導入支援サービスで驚異的成長

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、大企業らによる人工知能の導入を支援する新興企業ワンダフルは9月2日、立ち上げからわずか1年数ヵ月で評価額を50億ドルに押し上げた直近の資金調達ラウンドにおいて5億5000万ドルを確保したと発表した。本稿では、同社の快進撃とその要因について前編と後編に分けて解説する。

▽前方展開工学者部隊を米国以外で展開

ワンダフル(Wonderful、アムステルダム拠点)は、会社らが人工知能ツールを仕事の流れに統合するための支援サービスを提供する。

同社は、いわゆる「前方展開工学者(forward-deployed engineer=FDE)」を提供する体制に注力している。前方展開工学者部隊とは、顧客の現場に常駐して現場の仕事の流れに精通し、最適の人工知能技術を最適のかたちで既存システムに統合したり、人工知能主導型の業務過程に変更したりといった技術支援を提供し、各社の現場固有の課題の解決やシステム統合を直接手がける専門家集団を指す。

イスラエルのテルアビブで2025年初頭に起業された同社は本社をアムステルダムに移し、30ヵ国に拠点を持ち、欧州から中東、中南米、アジアの約50の市場で大企業らにFDE型人工知能導入支援サービスを展開している。

同社は、北米市場への進出をあえて避けている。北米では、技術コンサルティング大手や技術大手らがFDE型サービスを展開しているほか、ワンダフルの多言語性や多文化性が北米以外の市場で存在価値を高めているためだ。

▽米国のベンチャー・キャピタルらが大型投資

ただ、米国のベンチャー・キャピタル業界はワンダフルの快進撃に注目している。同社にすでに投資済みのインサイト・パートナース(Insight Partners、ニューヨーク市拠点)は、シリーズCの今回の資金調達で1億5000万ドルを追加投資し、同ラウンドを主導した。

そのほか、ロンドン拠点のインデックス・ベンチャース(Index Ventures)やカリフォルニア州メンロー・パーク拠点のIVP(Institutional Venture Partners)、ニューヨーク市拠点のヴァイン・ベンチャース(Vine Ventures)、サンフランシスコ拠点の9ヤーズ(9Yards)、カリフォルニア州レッドウッド・シティー拠点のベッセマー・ベンチャー・パートナース(Bessemer Venture Partners)といった既存ベンチャー・キャピタリストらも今回のラウンドで追加投資に加わった。

今回のラウンドでは、セールスフォース(Salesforce、サンフランシスコ拠点)がワンダフルに投資した新規投資家として参加した。

ワンダフルが2026年3月に実施した前回ラウンドでの同社の評価額は20億ドルだった。今回のラウンドを受けて、同社の累計調達額は8億ドルを超えた。

▽従業員数、1年で倍増

ワンダフルの従業員数はすでに650人に達する。この1年で倍増した計算だ。

JPモルガンの最近の報告によると、2026年上半期に米国内でシリーズDの資金調達を実施した人工知能新興企業らの従業員数中央値は366人だ。ワンダフルの今回のラウンドは、シリーズDの前段階であるシリーズCの段階だ。にもかかわらず、従業員数はその中央値の2倍近くに達する。

同社の快進撃は、FDE型人工知能導入支援サービスの需要がいかに旺盛かをあらためて示すものだ。それと同時に、同社の事業とサービス提供モデルの親和性の高さを裏づけると言える。

▽現地人材の雇用と顧客現場での常駐がカギ

バー・ウィンクラーCEOは、今回の調達資金を増員に投じる方針だ。同社のサービス提供モデルは、進出する市場で現地の人たちを雇ってFDE部隊を編成するというものだ。顧客会社らは、FDE部隊と同じ言語でやりとりでき、同じ文化を共有する。

進出市場(国や都市)を増やすことに注力する同社はそのため、優秀な人材を大量に雇う計画につねに取り組んでいる。同社は2026年末までに従業員数を1000人以上に増やす計画だ。

大企業での人工知能導入は、ソフトウェアを提供するだけでは成立しない、と同氏は指摘する。現場に入り込んで、各現場固有の課題を分析して最適解を導き出す人材が不可欠だ、と同氏は強調する。「人工知能という魔法の道具に頼るのではなく、顧客の現場の仕事を体験することが唯一の成功法だ」。

▽買収と独自ツールの開発が成長戦略の骨子

ウィンクラー氏によると、ワンダフルは増員のほかにも、進出先の市場において企業買収を実行する計画も視野に入れている。同社はこれまでも買収を成長戦略の中核にすえてきた。同社の年換算売上高実行レートは1年前に100万ドルだったが、その額はいまでは7000万ドルを超える。同社の顧客数は現在、約100社に達する。

同社はまた、独自ツールの開発にも注力しており、増収と追加資金調達によって、それをさらに強化する方針だ。同社は、非英語圏における顧客支援用の人工知能代理人(AI agent)の提供から出発したのち、自律稼働型人工知能代理人を構築できる汎用人工知能プラットフォームを追加した。

同社はさらに、コーディング用の人工知能代理人や既存の法人向け人工知能ソフトウェアを代替する人工知能ツールの市場投入も計画している。

▽ドイチェ・テレコム、ワンダフルとの協働を絶賛

ワンダフルの顧客会社の一つであるドイチェ・テレコム(Deutsche Telekom)の最高製品&デジタル責任者ジョナサン・エイブラハムソン氏は、「ギリシャで彼らと初めて協働した」「彼らは、これまで見たことのない速さでわれわれの職場に人工知能を導入した」と話した。

ドイチェ・テレコムは、ギリシャでのワンダフルとの協働成功を受けて、チェコ共和国でもワンダフルと提携した。

テルアビブで起業されてアムステルダムに本社を移転したワンダフルが、「ギリシャで事業展開するドイツ企業の顧客支援サービス業務に人工知能技術を導入することは非常に困難だったに違いないと想像する」とエイブラハムソン氏は話した。ワンダフルのFDE部隊は、地元企業同士、地元の人同士が協働するような働きぶりでつぎつぎに成果をあげていった、と同氏は付け加えた。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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