海外から日本の不動産を売買する際の手続と注意事項 ~【前編】購入時

文/蓑田透(Text by Toru Minoda)

今回と次回の2回にわたり、海外居住者が知っておきたい日本の不動産売買手続きについて紹介したいと思います。今回は購入時についてです。

ここ数年の円安傾向を背景に、外国人による日本の不動産の購入件数が増加しているというニュースを目にします。また私のところへも日本非居住者や外国籍取得者(元日本人)からの日本の不動産購入について問合せがあります。もちろん海外居住者でも、また外国籍でも日本では不動産の購入が可能です。そこで海外居住者が知っておきたい購入時の手続き方法や注意事項を紹介致します。

尚ここでは、住宅販売会社(以下「販社」)または不動産仲介業者(以下「仲介業者」)からの購入を前提にしています。個人間での直接取引については対象としていません。

1.購入物件の探し方

まず物件の探し方ですが、今日インターネットで新築および中古物件を探すことが可能です。以前は新聞などに不動産広告の折込がよく入っていましたが、今ではインターネットで不動産物件のPRサイトを開設したり動画広告を出すところが多くなっています。また最近では不動産の検索(マッチング)サイトも多く提供されていて、全国の販売物件を検索することができます。

仲介業者も全国に数多くあり、同じ物件が複数の検索サイトや仲介業者で取り扱われるケースも少なくありません。実際購入を検討している物件を見つけたところ、複数の仲介業者が販売しておりどこへ問合せようか迷う場合もあります。

こうした全国の販売物件は、販社が自社物件を仲介業者を介さずに直接販売する場合や売主・買主が直接取引する場合を除き、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営する「レインズ」というシステムに登録されていて、仲介業者(行政の認可が必要)だけが閲覧できるしくみになっています。仲介業者はレインズから情報を得て自社での販売物件として紹介しています。販売表示価格は仲介業者によって多少上下することもありますので、複数の仲介業者と値段の交渉をするのがよいでしょう。言うまでもありませんが、購入物件を最終決定するには現地見学はもとより、購入資金計画など十分検討した上で行います。

2.手続きの流れ

候補の物件が決まったら、以下の流れで手続きを進めるのが一般的です。(物件、購入者の状況や販社、仲介業者によって変わる場合もあります)

①購入の申込み

販社や仲介業者と購入条件について合意した後、購入の意思を伝えます。その後売買契約を作成しますが、取決め事項が多く契約書の作成に時間がかかる場合は手付金を払うのが一般的です。手付金の書類には「証約手付」「解約手付」「違約手付」と3種類あり金額は購入額の5-20%です(法律で20%が上限)。「解約手付」の場合、この間に買主の都合で購入をキャンセルした場合手付金は戻りません。

②購入資金の準備と住宅ローン

海外居住者の場合購入代金は一括支払いが基本です。資金が足りなければ住宅ローンの利用が一般的ですが、海外居住者は原則利用できません。また国内居住者でも外国籍の場合は、永住権がないと契約は難しいです。したがい海外居住者の場合は、まとまった資金がなければ現在保有する海外不動産を売却した上で、日本の不動産購入資金に充てるというケースが多いようです。

③売買契約

実際の売買契約締結日の前に販社や仲介業者から売買契約書、重要事項説明書(コピー)が提供されます。十分に内容を把握し、不明点や疑問点は質問して、理解・納得しておきましょう。その上で契約日を迎え、売買契約書、重要事項説明書に署名します。契約後物件が引き渡されたタイミングで代金(手付金を支払った場合は残額)を銀行振込の方法などで支払います。

3.海外居住者が知っておきたい注意事項

◆ 諸経費(税金、手数料)
不動産の購入手続きに際しては下記の費用が発生します。資金契約の際はこうした分の費用も考慮して計画をたてましょう。

・印紙税、登録免許税、不動産取得税などの日本の税金(※1)。目安としては購入額の3-7%になります。
・中古物件など仲介業者から購入する場合の仲介業者への手数料(購入額の3%前後)
・不動産登記手続きの際の司法書士への手数料

◆ 提出書類
高額の金銭を伴う契約のため、売買契約、不動産登記手続きとも本人確認書類として印鑑証明(実印+印鑑証明書)、住民票の提示が求められます。しかし海外居住者の場合はこれらがないため、代わりの書類提出が必要です。具体的には日本国籍では日本大使館/領事館のサイン証明書、在留証明書、外国籍の場合はNotary(公証人)が発行・認証するサイン証明書、居住証明書になります(※2)。

◆ 購入代金支払い時の外国送金
購入代金支払いですが、指定された銀行口座への振込となります。ただ海外の銀行口座からの直接の外国送金を認めていない販社、仲介業者の場合は、以前日本で開設した自分の口座や、非居住者口座があれば一旦そこへ送金してからの業者への振込となります(※3)。しかしもし日本に口座が無ければ。一旦日本国内で住民登録した上で口座開設するか(※4)、国内の信頼できる親族の口座へ一時的に送金してから支払う方法があります。尚100万円以上の送金(送受とも)金融機関は税務署への報告義務があるため、まとまった額の第三者への送金は贈与(税)の対象とみなされる場合があります。そのため後で贈与を疑われた際に、自分自身の住宅購入資金であることが説明できるよう売買契約書などは保管しておく必要があります。

◆ 居住中の海外不動産の売却のタイミング
日本での不動産購入の目的は日本への本帰国・移住時の居住用ということになるかと思いますが、一方で現在の居住国の不動産を売却する場合は、帰国時期とのタイミングに注意しましょう。日本で居住するとその時点から日本での税務申告の義務が発生します。居住国側の売却手続きが何らかの事情で遅れ日本居住後となる場合、米国だけでなく日本でも不動産譲渡所得税の対象となる場合がありますので注意が必要です(※5)。

(備考)
※1:購入後は毎年固定資産税も発生します
※2:業者によって記載内容の指定があることがあるので事前確認をしておきましょう
※3:まだ銀行に海外居住であることを伝えてない場合は、その旨申告することをお勧めします
※4:日本国籍の場合のみ(外国籍取得者は在留資格の申請が別途必要)
※5:なるべく専門家に確認するようにしてください

[本コラムの英訳版/English translated version of this Column]
http://www.life-mates.jp/Eng_Column13

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蓑田透 (Minoda Toru)

蓑田透 (Minoda Toru)

ライタープロフィール

早稲田大学理工学部卒業後、総合商社入社。その後子会社、外資系企業等IT業界で開発、営業、コンサルティング業務に従事。格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。米国をはじめとする海外在住の日本人の年金記録調査、相談、各種手続きの代行サービスを多数手がける。またファイナンシャルプランナー、米国税理士、宅建士、相続診断士、日本帰国コンサルタントとして老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、帰化申請、介護付き老人ホーム探し、ライフプラン作成、不動産管理、就労・起業、税務等の相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種代行、支援サービス(各種証明書の取得、介護・葬儀・相続など日本在住の老親のサポート)を行う。

●豊富な実績に基づくていねいなサポートで
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