就職&雇用ガイド2025

転職が当たり前の「流動の国」アメリカ。しかし今、その労働市場は大きな転換点を迎えている。採用の冷え込み、AIの進化、政策の不透明化、そして高齢化の進行。本特集では、データと現場の変化から“アメリカの雇用最前線”を読み解く。

監修

STS Career
https://usfl.com/author/stscareer
ロサンゼルスを拠点とし、アメリカ全土を対象にHR・人材ソリューションを提供するリクルーティングエージェンシー。

ジョブホッピングからジョブハギングの時代へ

昔から「転職大国」と言われてきたアメリカでは、自分の理想のワークスタイルや待遇を求めて転職をすることはごく一般的で、労働者は約4年に1回のペースで転職をするとのデータも出ている。このようにキャリアアップのために積極的に転職を重ねる人は、Hop(跳ねる) という言葉を使って「Job Hopper」と呼ばれてきた。 

そんななか、アメリカの労働市場で近年増えてきているのが「Job Hugger」だ。Hug(抱きしめる) から転じて、「辞めたい気持ちはあるけれど動けない」「今の職にしがみつかざるを得ない」という人を指す。求職者向けサービスを展開する「Resume Builder」が2025年9月に発表した調査結果によると、アメリカの労働者のうち45%がJob Huggerだと自己定義している。そのうち95%の人々は労働市場の不確実性を挙げており、また50%は、少なくとも一年は転職に踏み切れないと考えている。辞めたい気持ちがあっても「次が見つからないかもしれない」という不安から動けなくなっている人が増えており、このような状況は一時的ではなく長期化していることがうかがえる。 

労働者に労働市場の不確実性という不安を生み出している要因としては、以下の3つが挙げられる。 

①労働市場の冷え込み 
米国労働省が2025年8月に発表したJOLTS(Job Openings and Labor Turnover Summary。雇用動態調査)の結果を、Job Hopping全盛期だった2021年のGreat Residnation(大離職時代)と比較すると、以下のような結果となる。 

企業はすぐに雇うよりも一旦様子を伺う傾向にあり、労働者は「辞めても次が見つからない」という状況にある。こういった流動性の低下が市場を停滞させていると考えられる。 

②AI・自動化への懸念 
同調査では77%のJob Huggerが自動化に懸念を示しており、AIによって就職が難しくなることへの不安があることも分かっている。LLM(大規模言語モデル)やAIの発展が業務の自動化や仕事の再定義を加速する可能性も指摘されており、高スキル層・中スキル層の業務にも影響が及ぶ可能性は、多くの人にとってリアルな恐れに変わってきているようだ。 

③経済・政策の不透明性 
関税政策の変更や移民取締強化が、企業が抱えるコストや雇用判断の不透明さを引き起こしていることも分かっている。世界最大の通信社の一つである「ロイター通信」は、2025年9月に以下のように報じている。 

先行きの見えない要素が米国企業を「積極拡大」から「慎重様子見」へと舵切りさせ、新規ポジションの凍結や予算計画の延期に導いているとのこと。特に国際取引に依存する企業や外資系企業では、政策の行方次第で採用計画そのものを見直さざるを得ないケースも増えています。 

このように、政策と経済の不透明さが企業の採用停滞を生み出し、結果として労働者が辞めにくい心理=Job Huggingを一層強めているのだ。 

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