海外在住者のための日本の年金請求手続き~提出書類について〜

文&写真/蓑田透(Text and photo by Toru Minoda)

海外(日本国外)在住者が日本の公的年金(国民年金、厚生年金、共済年金など)の請求手続きをする際には、日本国内在住者と提出書類が異なるケースが少なくありません。そこで今回は、海外在住者の年金請求時の提出書類について紹介します。

1.一般的な提出書類

日本年金機構のウェブサイトの下記ページに必要書類についての説明があります。

<日本年金機構>
「海外居住者の年金請求」ページ→「支給開始年齢になったとき」ページへリンク
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/rourei/seikyu/20141128.html

この「支給開始年齢になったとき」ページの中の見出し「2.請求書の提出について」「(1)請求するときに必要な書類等」にある「すべての方に必要な書類」という項目部分に、年金請求書のほかに下記3点が表で記載されています。

・本人を証明するもの(戸籍謄本、戸籍抄本、住民票、住民票の記載事項証明書のいずれか一つ)
・年金振込先の銀行口座の通帳(本人名義)
・印鑑(認印可)

そしてさらにページを下へスクロールすると、「その他 ご本人の状況によって必要な書類」という表があります。実は米国を含め、海外在住者のケースではこれに該当する状況が少なくありません。実際例としてどのような書類が求められるか紹介します。

2.海外在住者が請求する場合に必要となる書類

ここには6項目の書類が表でまとめられていますが、海外在住者の場合、最後にある「合算対象期間が確認できる提出書類」が重要となります。日本の公的年金は現役時の年金保険料を10年間(2017年7月までは25年間)支払うと、原則65歳から老齢年金を受給することができます。しかし、海外在住者の場合は10年に達していなくても、合算対象期間(海外在住期間)との通算で10年に達していれば年金を受給することができます。そのため、年金加入期間が10年未満の人は、自分が一定期間日本国外に在住していたことを証明する必要があります。

実際に提出する書類としては、「戸籍の附票(の写し)」になります。あまり聞き慣れないかもしれませんが、戸籍謄本や戸籍抄本とは別に、居住地の履歴を記載する証明書として市町村役場で取得することができます。日本に居住している人が転居届を市町村役場へ提出することで、転出先が戸籍の附票に明記されます。ただ、転居届を提出していない場合は海外への転居日が記載されないので利用できません。別の書類としては、出入国管理庁発行の「出入国記録(マスターファイル)」または「パスポート(コピー可)」が必要です。ただし、パスポートは海外転出時から60歳までの期間のすべての(古い)日本のパスポートが必要です(カラ期間は日本国籍が条件なので、海外転出後、外国籍を取得した場合は60歳ではなく帰化時点までの分となります)。海外在住期間が5年以上となれば複数冊のパスポートになりますが、そのうち1冊でも紛失している場合や、パスポート有効期限から次のパスポートまでの発行日までに空白期間がある場合は提出書類としては認められません。

「出入国記録」は、自身が出入国管理庁の窓口(東京都千代田区)で取得することができます。ただ、来日の機会がない海外在住者の場合は郵送による請求となりますが、この方法はやや複雑で面倒な手続きとなります。

3.表には書かれていないその他必要な書類~在留証明書

日本国内在住者については住民票(または戸籍謄抄本)を提出しますが、海外在住者には住民票がありません。そこで代わりの書類として、在留証明書を提出します。在留証明書は現地の日本領事館で発行されるものですが、現地のNotaryの証明書でも提出可能です。ただし現地のNotaryに作成してもらう場合、内容が英文であれば和訳の添付が必要です(簡単な和訳でOK)。

4.年金振込先銀行口座の通帳

海外では、日本のように銀行の通帳はあまり見かけません。そのため、通帳の代わりに年金振込先の銀行口座の分かる小切手(Void Check)または銀行のステートメントのコピーを提出します。

いかがでしょうか? 日本年金機構のウェブサイトの内容だと、情報量が多く理解しづらいかもしれません。分からない場合は、日本年金機構へ電話で問い合わせると良いでしょう。

(備考)
●上記は老齢年金請求手続きのですので、その他の年金(障害年金、遺族年金、加給年金など)を請求する場合は、異なる書類の提出が必要です。
●年金請求書のフォームは年金事務所にあります(またはインターネットでダウンロード可)。
●年金加入期間が10年未満の場合、合算対象期間のほか、米国年金(Social Security)加入期間を通算することもできます。

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蓑田透 (Minoda Toru)

蓑田透 (Minoda Toru)

ライタープロフィール

早稲田大学理工学部卒業後、総合商社入社。その後子会社、外資系企業等IT業界で開発、営業、コンサルティング業務に従事。格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。米国をはじめとする海外在住の日本人の年金記録調査、相談、各種手続きの代行サービスを多数手がける。またファイナンシャルプランナー、米国税理士、宅建士、日本帰国コンサルタントとして老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、帰化申請、介護付き老人ホーム探し、ライフプラン作成、不動産管理、就労・起業、税務等の相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種代行、支援サービス(各種証明書の取得、成年後見など日本在住の老親のサポート)を行う。

●豊富な実績に基づくていねいなサポートで
ひっきりなしに持ち込まれるお客様からの国際手続きに関する多種多様なご依頼、ご相談(お悩み)を断り切れず休日返上で対応しているうちに、気がつけば(年金、日本帰国といった当初の事業以外の)あらゆる分野のノウハウを備えたオールラウンドコンサルタントに。当社で対応できないケースでも、的確な解決方法や提携先の他分野専門家を紹介します。

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