
誰でもギルティプレジャーがあるだろう。何か難しいこと、面倒なことを頑張って終えた後に、自分にご褒美としてぐうたらな時間を許す。皆さんそれぞれに違った楽しみ方があるだろう。男性なら仲間と一緒にスポーツバーに行き、羽を伸ばす。女性なら仲の良い友人が集まり、お茶をしながら楽しい時を過ごすとか。私の密かな楽しみはユーチューブをあちこち検索すること。これが実に面白い。
今はたくさんの方が自由に参加し、内容もさまざまである。世界の貧困地帯で広い領域に井戸を何千機も取り付け、涼しい顔をしている素晴らしい若い日本人女性もいる。若者の強靭さ、ブレない信念と行動力に敬服する。またそれを取材しに遠く現地に赴くユーチューバーもいる。誰かが報道してくれるからこそ、我々がそれを知ることができる。偶然そのサイトを見つけた時はグッドボタンと登録ボタンを押す。無償で受け取る側からのせめてもの感謝の気持ちだ。現地人と一緒に暮らし、生活する人々の本音を聞き、本当の問題は何かを探る驚くほど現実に迫った真摯な内容である。勉強になる。本気で学びたいなら、かなりのことが学べる。
真面目なサイトはそれ故に残念ながらあまり人気がない。一般多数の人々の興味を惹くのはやはり自分達と同じ生活レベルの日常の気楽な料理番組だ。料理人の手元だけが映され、人物像は画面には出ないものが多いから、出演する人も視聴者も気楽だ。スローテンポで料理され、知らず知らずにこのテンポが心地よく、リラックスしてくる。初めて日本語テレビを見た時、そのあまりにもスローさに絶えられなかったが、今では慣れてしまい心地よい。料理も誰にでも真似できそうな平凡なものが多く感情移入が簡単で、ついつい見てしまう。人間の慣れというのは恐ろしいものである。
今から50年前は外国に行く、ましてや住むなどというのは特別なことだった。しかし今や時代は代わり、国際結婚で若者はどんどん外国に出て行き、そこでのありのままの生活をリポートしてくれる。イギリスの片田舎の小さな町で、夫と穏やかな生活をしている人の毎日の夕食のお料理など、何の演出もない素直なもので、彼らの日常生活が居ながらにして推測できる。フランスの地方で質素で堅実な生活をする若いカップルの日常を見せてもらえるのも、貴重だ。「ああこういう生活感なのだな」と理解できる。イタリアのフィレンツェに住む人の生活ぶりを見て、「イタリア人って愛すべき人々だな」、とそれぞれの国民性も推測でき微笑む。報告してくださる人はとても素直で、奇を衒わず、現実をそのまま見せてくださる。それぞれ面白く、時を忘れる。
最近注目したのは、フランスに何の憧れも持たずに結婚のため移住し、仏語を一から勉強し、異国の面倒な手続きと生活の基盤を作り、3人の子どもを育てた日本人女性。26年間の仏生活を振り返り「タフでなければ生きられない外国生活の総括」を話されたのには、感銘を受けた。完璧な日本語の言葉使いにも、飾らないしっかりした人柄が滲み出る。フランス人夫は実業家と長年紹介されていたし、趣味の良いアートに溢れた貴族のお屋敷のような邸宅に住まわれているので、てっきり貴族と結婚された羨ましい方だと思い込んでいた。しかし現実は20年間賃貸で、二人の最初からの同意で、住居費、生活費、子どもの養育費すべての費用を折半し、割り勘で家計を賄ってきたと話されたことだった。「割り勘夫婦」と笑い飛ばすその笑顔が清々しい。逞しくなくては生きて行けないと静かに語る外見はファッショナブルで美しい。収入を得て家族を養うことの大変さを背負ってきた人の言葉は重い。人を外見で判断して羨ましがってはいけないと反省した。事実はもっと奥深い。こんな日本人女性がいたことに心から勇気づけられ、世界が輝き始めた。素晴らしい人は我々に希望を与える。
世界の秘境で厳しい自然環境で生活している人々、アジアのストリートで安価な食事を作り売る人。戦後の日本人の逞しさを思い出させてくれるサイトもある。今米国は不透明な未来に直面している。たくさんの情報を集め、取捨選択し、自分に必要な情報を見極める私たち一人ひとりの責任はますます重くなっている。しっかりしなければ意味のある人生は生きられない厳しい時代になった。
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