日本はなぜヒューマノイド・ロボットをつくれなくなったのか 〜 自国開催の見本市で浮き彫りになった実態と今後の方向性

レヴォリューション・インAI誌によると、2026年6月中旬に愛知県常滑市で開かれた見本市「ロボット・テクノロジー・ジャパン2026」では、出展された約1400のブースのうち、実演した日本製ヒューマノイド・ロボットはゼロだった。人型ロボットにおいて世界最先端を走っていた日本は同市場からなぜ消えたのか。

▽ドゥーボットのアトム・マックス

日本は、人型ロボットの必要性を世界中のだれもが理解していなかった40年以上前の1973年に、世界初の本格的ヒューマノイドを開発した国だ。にもかかわらず、ことしの自国開催の見本市において、国産ヒューマノイド・ロボットをたったの1台も出展できなかった。

今回の見本市では270社以上がブースを出したが、ヒューマノイド・ロボットの実演を実施したほぼすべては中国企業だった。

広東省深圳市拠点のドゥーボット(Dobot)が開発したヒューマノイド・ロボット「アトム・マックス(Atom Max)」は、来場者にポップコーンを手渡し、人間の毛髪の幅に相当する0.05ミリメートルまでの正確な移動精度を披露した。

アトム・マックスの武器は、動作の精密さではなく学習システムだ。担当者が遠隔操作で動作を1回だけ実演させると、アトム・マックスの人工知能は軌道と関節の位置を記録し、その同じ動作データを当該ロボットから水中機械腕まで同社のすべての製品群と共有する。その結果、1台のロボットが学習したばかりの動作が全製品の性能に即時反映される。テスラ(Tesla)の手法を模倣したしくみだ。

▽リムエックスのアリ

ドゥーボットのとなりのブースでは、同じく広東省深圳市拠点のリムエックス・ダイナミクス(LimX Dynamics)が「アリ(Ali)」を披露した。アリは、一連の音声指示を順番に受け取り、指示された動作内容を記憶し、指示された物体を自力で特定して、途中で停止することなく作業を完遂した。

多段階の自律判断と一連の行動を連続して実行できる機能はめずらしい。それら一連の動作を実行するヒューマノイド・ロボットの動画の大部分は、実際には編集されており、段階間に操作担当者がロボットに指示するという過程が削除されてある場合が多い。アリはそれを克服した人工知能ヒューマノイド・ロボットとして位置づけられる。

▽日本は中国企業の代理店に

今回の見本市は、実質的には、中国が日本市場を開拓するために代理店契約する日本企業らを使ってヒューマノイド・ロボットを実演し、売り込み攻勢をかけるという性質の催事になっていた。

つまり、日本企業らは、ヒューマノイド・ロボットを独自に設計および開発する代わりに、中国製を日本で販売する供給網と代理店網の整備に最初から照準していたことをあらためて示した。

過去20年以上にわたって人型ロボットを象徴したアシモ(Asimo)の開発を2018年に打ち切った本田技研工業を輩した現在の日本は、人工知能ヒューマノイド・ロボットの分野にかぎれば中国と米国に完敗した状況にある。

▽機械腕の進化版に注力する日本

その代わり、日本は、機械腕に代表される従来型ロボットの進化版に照準する道を選んだ。ホンダは、アシモの5倍の力でにぎれる多指機械手を備えた遠隔操作式分身ロボット(avatar robot)の開発に軌道修正した。同社はそれを2030年代中に実用化することを目指している。米中のロボティクス開発新興企業らにくらべると開発速度はかなり遅いと言える。

そのほか、東京電力は、福島原発事故から15年が経過した2026年3月、損傷した3基の原子炉から溶け落ちた核燃料がれきを採取するために、7階建てビルにほぼ匹敵する約22メートルの機械腕を現場に投入した。現場の放射線量は、毎時4.7から9.7シーベルトに達する。人間であれば数分以内に死亡する量だ。

東京電力は、東京拠点の非営利技術研究組合アイリッド(IRID=International Research Institute for Nuclear Decommissioning、国際廃炉研究開発機構)が開発したその巨大機械腕を使って、福島第一原発2号機の原子炉格納容器(PCV)の内部を調査し、そこにある燃料残骸(破片)を採取する方針だ。

▽ギタイも機械腕に照準

日本の新興企業もヒューマノイド・ロボットではなく機械腕の道を進んでいる。東京拠点のギタイは、国際宇宙基地の内部および外部の両方で機械腕の試験を行い、米国航空宇宙局(NASA)や米宇宙軍と月面探査車建設の契約を含めて提携している。

ギタイの事業方針は、アシモを実用化できなかったホンダの挫折を反映していると言える。ギタイはまた、シャフトの後継会社とも言える。シャフトは、ダーパ・ロボティクス・チャレンジ(DARPA Robotics Challenge)においてボストン・ダイナミクス(Boston Dynamics)に勝利した会社だった。ダーパとは、米軍の国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency)を指す。

日本のベンチャー・キャピタリストや政府がシャフトに投資していたら、シャフトは革新的なロボティクス会社に成長していたかもしれない。シャフトはグーグル(Google)に買収されたが、グーグルは同社を解散した。ギタイは、シャフトの創設者が設立した会社だ。

▽米国式と中国式

ヒューマノイド・ロボット産業は現在、米国と中国が示す二つの互換性のない賭けによって成り立っている。

欧米の賭けは将来の評価額にある。サンノゼ拠点のフィギュアAI(Figure AI)の評価額は約18ヵ月で26億ドルから390億ドルへと急上昇したが、実際に稼働しているロボットは推定150台に過ぎない。価格と製品のあいだのその格差はバブルの教科書的な定義に近いと言える。

かたや中国の賭けは数量にある。中国のヒューマノイド会社らは、1台の完璧な試作品をつくる代わりに、何千台もの単純な機械を倉庫や工場に出荷した。当然ながら失敗が多発したが、1社が一つの完璧なヒューマノイド・ロボットを完成させるよりも、多数の会社らが失敗から学んで反復開発を繰り返すという手法によって先進的ヒューマノイド・ロボットの開発を加速させた。

▽中国台頭の背景にある要因

中国ヒューマノイド会社らの台頭の背景には、駆動装置や精密部品を安価かつ大量、そして迅速に生産するという世界の工場として過去何十年間にわたって培ってきた基礎的技術力と基礎的供給網がすでに整備されていたという要素がある。

さらに、ベンチャー・キャピタル投資や政府からの開発補助金も豊富だ。それに加えて、米国の生成人工知能モデル群からの「蒸留」(中国の場合は実質的に窃盗、盗作)行為によって人工知能技術を迅速かつ安価で構築するという要因もある。

2026年における世界ヒューマノイド・ロボット生産量のうち、中国製の市場占有率は80%〜90%に達すると見込まれる。杭州拠点のユニツリー(Unitree)はすでに黒字化しており、利益率は60%に達すると報じられる。

▽日本が脱落した主因

日本企業らが人工知能ヒューマノイド・ロボット開発で敗北した主因は、ベンチャー・キャピタル業界からの資金調達の困難さや政府補助金の欠如もあるが、そもそも、同分野での成功を目指す起業家や大企業内の開発者らの人材不在という要因も大きい。

日本人は、人工知能やソフトウェア、プラットフォーム(土台、基礎となるしくみ)の設計や開発に弱い。したがって、もともと強い産業向け機械腕に工学者や開発者たちの意図や関心が向かう。

大企業らの企業文化もそういった方向性を明示している。だれにも負けない精密ネジをつくれても、精密ネジの設計と製造を自動化する人工知能基盤プラットフォームを構築できないのが日本だ。

それに加えて、日本企業の大部分は意思決定が遅いというのも特徴だ。日本企業が検討しているあいだに、米中の会社らは投資を実行し開発を加速させ、大量生産体制を整備し、流通に着手している。

▽巻き返しを図るノエトラ

ただ、日本は最近、人工知能ロボットの活用を劇的にあと押しする政策を打ち出した。日本政府は2026年7月初旬、最大6億1000万ドルの資金援助を背景に、2040年までに1000万台の人工知能搭載ロボットを稼働させる目標を設定した。日本人10〜12人に約1台の割り合いとなる計算だ。

日本政府のねらいは、産業用か個人向けを問わず、あらゆるロボット上で動作可能の人工知能層(基盤モデル)の構築を刺激することにある。

それを受けて、ソフトバンクとソニー、ホンダ、日本電気が中心となって企業連合「ノエトラ(Noetra)」を発足させた。製造業から金融、ITを含む広範の業界から44社がノエトラに投資し、物理的人工知能(physical AI)の土台となる国産人工知能基盤モデルの構築に取り組む姿勢だ。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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