ウォルマート、新型アイフォーンを値下げ 〜アップルの価格管理を打破

 小売チェーン世界大手のウォルマート・ストアーズ(Wal-Mart Stores)は、アップル(Apple)が先日発表した廉価版アイフォーン(iPhone)をメーカー希望小売価格より20%安く販売する計画だ。

 ウォルマートは、アップルが9月下旬に発売する廉価版アイフォーン(iPhone)5Cを、2年間の携帯電話サービス加入契約者に定価より20ドル安い79ドル(下位機種)で販売し、高位機種のアイフォーン5Sでは、同じく加入契約する場合に希望小売価格より10ドル安い189ドル(下位機種)で販売する。

 ビジネスウィークによると、アップルは通常、拘束力はないが「強く推奨される」価格として、広告表示価格の最低額を小売業者との間で設定し、製品販売価格を厳しく管理することで有名で、同社製品が値下げ価格で販売されることは極めてめずらしい。

 小売業者がアップル指定の最低額を維持する場合、アップルはその小売業者に対し、マーケティング費用という名目で奨励金の提供を約束する。

 一方、最低額を下回る小売価格をつける店舗には、アップルが製品供給を停止するという報道もあるほど、同社は価格維持に厳格だ。

 その背景には、資金力のある大手小売業者の価格攻勢から小規模小売業者を守る狙いと、アップル店舗と他店との間で製品価格差をなくすというアップルの思惑がある。

 また、アップルはメーカー希望小売価格と大差ない価格で流通業者に製品を卸していることから、流通業者が値下げ自体に消極的という事情もある。

 ウォルマートがアイフォーン値下げを実現できたのは、携帯電話サービス事業社(キャリヤー)から大型の販売支援金を得られたからという見方もある。しかし、キャリヤーがそういった契約を敬遠する傾向が強くなっていることを考えると、むしろ次に挙げる二つの可能性の方が現実味を帯びてくる。

 まず、低所得層のアイフォーン市場開拓をアップルとウォルマートが狙った可能性がある。中高所得層スマートフォン市場がすでに飽和していることに加え、サムスン電子(Samsung Electronics)が高位機種を強化している。ウォルマートがアップルに対し、値下げによる低所得層開拓を持ちかけた可能性は十分に考えられる。

 そして、ウォルマートがアップルによる奨励金を無視し、アイフォーン販売にともなう利益を犠牲にしてでも、利幅40%でアイフォーン用アクセサリーを販売する方が理にかなうと判断した場合も考えられる。

 ウォルマートはこれまでも人気製品を値下げして集客し、ほかの製品を売る戦略を成功させている。

 また、ウォルマートは米国第1位の携帯電話販売店であり、アップルによって製品供給を断たれる心配はほとんどない。

 ウォルマートの広報担当者は、アイフォーン値下げはあくまでウォルマート独自の判断であると述べたが、その背景に関する詳細については明らかにしていない。

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