今月からスタート!ニューヨークの新しい「別荘税」とは?

ニューヨークの不動産マーケットで、またもや、とても注目されている新しい税金が成立しました。通称「ピア・ド・テール税(Pied-à-Terre Tax)」、正式名称を「Second-Home Annual Tax」といいます。これは一言で言うと、ニューヨーク市内に家を持っているものの、そこをメインの住まい(主たる居住地)としていない人に対して、毎年課される新しい税金です。主に海外の投資家や、別荘(セカンドホーム)として物件を購入した人、あるいはニューヨーク以外に本拠地がある富裕層などが対象となるため、マンハッタンの高級不動産市場を中心に大きな話題となっています。

この税金は、2026年7月1日からスタートし、2031年6月30日までの5年間の時限措置として導入されます。対象となるのは、ニューヨーク市内にある一定の評価額を超えたコンドミニアムやコープ、そして1〜3世帯向けの戸建て住宅などです。

ただ、オーナー本人が住んでいなくても、配偶者や子どもが暮らしている場合や、正式にテナントに賃貸している場合などは、原則として課税の対象からは外れます。選択肢があるというのは、投資家やオーナーにとって少し安心できるポイントかもしれません。

しかし、今回の新制度で本当に気をつけなければならないのは、税金が始まることそのものよりも、2028年に予定されている「物件の評価方法の変更」にあります。実はこの制度、2段階に分かれて導入される仕組みになっています。

まず、2026年7月から2028年6月までの「第1段階(フェーズ1)」では、現在ニューヨーク市財務局(DOF)が使っている評価額を基準に税金が計算されます。ポイントは、この財務局の評価額というのは、実際に売買されている市場の価格よりもかなり低く抑えられているのが実情なので、実際には数百万ドル(数億円)もするような高級物件であっても、この最初の2年間は「評価額が低いおかげで、結果的に課税対象にならない」というケースが相当数あると見られています。

ところが、2028年7月から始まる「第2段階(フェーズ2)」になると、状況がガラリと変わります。コンドミニアムやコープの評価方法が、これまでの財務局独自の評価額から、近隣の「類似物件の売買事例」をベースにした、実際の市場価格に近いリアルな評価方式へと変更される予定だからです。つまり、これまでは低い評価額に守られて税金を免れていた高級物件が、2028年7月を境に、一気に課税対象へと引き上げられる可能性が非常に高くなります。

この新しい税金に対しては、市全体の税収が増えたり、投資目的で買われたまま誰も住んでいない「空室」が減ったりすることを期待する声があります。その一方で、反対派からは、購入者の投資意欲が冷え込んで不動産の取引件数が減ってしまうのではないか、という懸念も強く上がっています。特にマンハッタンの高級コンドミニアム市場では、物件を買うときの初期費用だけでなく、今後は「将来にわたってどれくらいの維持コスト(保有コスト)がかかるのか」が、購入を決める上での重要なポイントになってくるでしょう。

これからニューヨークで高額な不動産の購入や売却を考えている方は、目先の購入費用だけでなく、2028年以降にやってくる評価制度の変更まで見据えた、長期的なシミュレーションをしておくことが大切です。特に影響を受けやすいマンハッタンの高級物件を検討されている場合は、早いうちに弁護士や税務の専門家に相談し、しっかりと先を見通した計画を立てることをおすすめします。

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柏原知子 (Tomoko Kashihara)

柏原知子 (Tomoko Kashihara)

ライタープロフィール

大阪女子大学(現:大阪府立大学)卒業後、CBRE Japanに入社。東京で外資系企業のオフィス移転を担当する商業不動産ブローカーとして働いた後、ニューヨーク勤務を機に住宅ブローカーに転向。1999年より住友不動産販売NYで活躍した後、2021年に米系大手Compassに移籍。趣味は旅行、クルーズ、トレッキングとイタリア語。

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