日米物流を支える大手事業者に行政処分〜 米国発貨物への影響は? 在米企業が見直したい物流リスク

日本と海外を結ぶ物流ネットワークに大きな影響を与える可能性のある事象が起きた。SGホールディングスグループの国際物流会社であるSGHグローバル・ジャパン(SGJ)が、関税法違反に伴う行政処分を受け、通関業許可の取り消しおよび保税蔵置場許可が取り消しになることが明らかになった。

同社はこれまで、日本向け航空貨物や越境EC貨物、企業間輸送など幅広い分野で国際物流サービスを展開してきた。特に米国から日本への輸送を利用している企業にとっては、「自社の貨物に影響は出るのか」と気になるところ。現時点で物流そのものが停止するわけではないが、今回の事案は在米日系企業にとって物流体制を見直す重要なきっかけとなりそうだ。

米国から日本への輸送は止まるのか

結論から言えば、米国から日本への貨物輸送が突然ストップする可能性はない。SGホールディングス側は、通関業務や保税業務について協力会社への委託を進め、顧客サービスを継続する方針を示している。そのため、現在SGJを利用している企業の貨物が日本の港や空港で滞留するような事態は限定的とみられている。

しかし、実務担当者の視点で見ると注意すべきポイントがある。国際物流では輸送そのものよりも、通関や保税保管などのバックエンド業務がボトルネックになるケースが多い。業務移管が進めば、一時的な処理能力の低下や手続き変更による混乱が起こる可能性がある。

特に航空貨物はスピードが重視されるため、わずか1日から2日の遅延でも納品計画や販売計画に影響を与えることがある。中でも食品輸出企業への影響は小さくないと思われる。

また、近年は日本企業が米国倉庫に在庫を保管し、日本国内の顧客へ直接発送する越境ECモデルも増えている。こうしたビジネスでは物流の遅延がそのまま販売機会の損失につながる。特に食品は賞味期限管理が必要なケースも多く、輸送日数の増加は在庫回転率や販売計画にも影響を及ぼす。

今回のニュースを受け、自社で利用する物流パートナーに何かトラブルが起きた時、どのような代替体制を構築するのかを確認しておくことが重要だろう。

越境EC事業者は要注意

さらに影響が大きいと考えられるのが越境EC事業者だ。近年、日本向け越境EC市場は急速に拡大している。アニメ関連商品や化粧品、健康食品などを米国から日本へ販売する事業者も増えている。

越境ECでは一件あたりの貨物量は少ないものの、取扱件数が非常に多い。そのため通関業務の効率化が事業収益を左右する。もし業務移管により処理時間が延びれば、配送リードタイムの増加や顧客満足度の低下につながる可能性もある。EC事業者にとっては、自社が利用している物流会社がどの通関業者を利用しているかまで把握していないケースも少なくない。

今回のニュースを機に、自社の物流フローを改めて確認する企業も増えそうだ。

「物流BCP(事業継続計画)」が経営課題になる時代

今回の事案で最も注目すべき点は、単なる法令違反ではなく、サプライチェーン全体のリスクが表面化したことにある。近年はコロナ禍による港湾混雑、紅海情勢による海上輸送の混乱、米中対立によるサプライチェーン再編など、物流を取り巻く不確実性が高まっている。その中で、物流業務を一社へ集中させるリスクも改めて認識されるようになった。

輸送会社、フォワーダー、通関業者、保税倉庫を実質的に一社へ依存している場合、その事業者で問題が発生すると代替手段の確保に時間を要する。特に日本本社から物流コスト削減を求められ、一社集中契約を採用している企業は少なくない。しかし、コスト最適化だけでなく、事業継続性の観点から複数の物流ルートを確保しておく重要性は今後さらに高まるだろう。

実務担当者が今確認したいポイント

今回のSGHグローバル・ジャパン(SGJ)への行政処分を受け、在米企業の物流担当者や経営者が確認しておきたい項目は明確だ。

まず、自社の貨物がSGJまたは関連ネットワークを利用しているかどうかを確認すること。次に、日本到着後の通関業者や保税倉庫が変更される可能性があるかを物流会社へ問い合わせたい。さらに、緊急輸送時の代替フォワーダーを確保しているか、日本向け輸送ルートが複数存在するかも重要な確認事項となる。

物流は普段問題なく動いている時には意識されにくい。しかし一度トラブルが発生すると、営業や生産、販売まで広範囲に影響が及ぶ。

今回の件は単なる物流業界のニュースではない。米国と日本を結ぶサプライチェーンを維持する上で、在米企業が自社の物流体制を再点検する契機として捉えるべき事案と言える。

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

この著者の最新の記事

関連記事

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
STS Career

注目の記事

  1. 2026年6月1日

    AI時代の仕事術2026
    2026年、AIは「使う」から「任せる」へ 2020年以降、AIの進化は「生成能力...
  2. 植民地から合衆国建国へ 18世紀半ば、現在のアメリカ東海岸にはイギリスの支配下にある...
  3. 2025年12月1日

    就職&雇用ガイド2025
    監修 STS Career https://usfl.com/author/stscar...
  4. 2025年10月8日

    美しく生きる
    菊の花 ノートルダム清心学園元理事長である渡辺和子さんの言葉に、「どんな場所でも、美しく生...
  5. 2025年10月6日

    Japanese Sake
    日本の「伝統的酒造り」とは 2024年12月、ユネスコ政府間委員会第19回会合で、日...
  6. アメリカの医療・保険制度 アメリカの医療・保険制度は日本と大きく異なり、制度...
  7. 2025年6月4日

    ユーチューバー
    飛行機から見下ろしたテムズ川 誰でもギルティプレジャーがあるだろう。何か難しいこと、面倒なこ...
  8.        ジャズとグルメの町 ニューオーリンズ ルイジアナ州 ...
ページ上部へ戻る