フォルクスワーゲン(VW)グループの高級車など約4000台を積んで大西洋を航行中、出火した商船三井の自動車運搬船「フェリシティ・エース」の被害額が3億3460万ドルに上るという試算結果を、コンサルティング会社アンダーソン・エコノミック・グループが発表した。
オートモーティブ・ニュースによると、アンダーソンは当初、2億8200万ドルと見積もったが、21日に上方修正した。
VWは火災による損失見積額を開示していない。また、被害があった車両の費用を保険でどれだけ補償できるかについても不明だ。4000台のうち1100台はポルシェで、残りはVWブランド、アウディ、ベントレー、ランボルギーニだった。
アンダーソン報告書によると、ポルシェだけでもカスタムを施した高級モデルが多く、1100台の価値は1億4000万ドルを超える。また、船の引き揚げ費用は1億5000万ドルを超えると見込まれる。近年起きた類似の災害を例にすると、全体的な被害額は1年以上過ぎても判明しない可能性があり、貨物の被害額をはるかに超える可能性もある。
報告書は「船は乗組員が下船した後も燃え続け、(電気自動車モデルに搭載されたリチウムイオン電池の)リチウム火災の疑いも認められることを考えると、ほぼ全ての車両が修復できない損傷を受けたと推測され、米国市場では販売できない。これらの車両は火災、煙、水による損害を受けただけでなく、海水に浸る恐れもある。恐らく可燃物はほとんど残っていないだろう」説明している。
別のコンサルティング会社のラッセル・グループは21日、VWの損失は1億5500万ドルを超えるとの予測を発表した。フェリシティ・エースには総額約4億3800万ドルの価値がある商品が積まれており、うち車両の価値は4億100万ドルと推定している。
フェリシティ・エースを運航する商船三井のウェブサイトによると、船はドイツから米国に向けて大西洋を航行中、16日にポルトガルのアゾレス諸島沖で出火した。乗組員22人は全員がアゾレス諸島に避難している。21日朝に消防設備を備えた2隻のタグボードが漂流中の船に到着し、船の冷却のためすでに乗船していた救助チームとともに水の噴射作業を始めた。船からの油漏れは確認されておらず、船は安定しているが、日本時間24日更新の最新報告では、煙の量が減っているものの、引き続き船から白煙が目視できる状況だという。
アンダーソン報告書は、EV輸送の将来的なリスクについてもいくつかの疑問を投げかけている。「今回の事故はEVの安全面に関して警告を発している。EVは通常では起きないような火災のリスクを伴う非常に大量の電池に依存している」
「2005年に建造されたフェリシティ・エースは間違いなく貨物倉庫内に消火設備を搭載していた。にもかかわらず、現場からの報告では炎上する車両の煙で乗組員の消火能力では手に負えず、その結果船は急速に無力化した」
「EVの電池が火災の原因か、船のほかの部分から出火したかはまだ不明だ。いずれの場合も、今回の悲惨な状況は、将来のEV輸送では安全面で高額な投資を行う必要があることを示している」
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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