米国内の倉庫スペースの空室率が新型コロナウイルス禍後で最高水準まで上昇していることが、商業不動産サービス会社クシュマン&ウェイクフィールドの最新調査で分かった。
◇5%超
ウォールストリート・ジャーナルによると、倉庫の全米平均空室率は、2023年10~12月期に5.2%となり、前期の4.6%、前年同期の3.1%から急上昇した。空室率が5%を超えたのは、新型コロナのパンデミック(大流行)による電子商取引の急増で倉庫の建設と賃貸が劇的に拡大した20年以来。20年には、企業が迅速な宅配のために商品の補充を急いだため、保管スペースの需要が急上昇し、インターネット通販大手アマゾンは発送センター・ネットワークの規模を24カ月で倍増させた。
こうした動きにより、22年後半には全米の倉庫空室率が3%まで低下し、南カリフォルニアなど一部の市場では事実上空きのない状態となった。過熱する市場には不動産開発業者が殺到し、4年間で20億平方フィートを超える保管・流通スペースが追加で建設されたが、過去1年半は金利の上昇、個人消費の変化、米経済への不安を背景に小売業者が在庫の補充を控え、リース関連の決断を遅らせている。
23年通年で企業が新たにリース契約した倉庫スペースは約5億8800万平方フィートで、前年から27%減少した。サプライチェーン責任者を対象とした月次調査ロジスティクス・マネジャー・インデックスによると、23年12月も利用可能な倉庫面積は拡大したが、そのペースは前月より減速している。
◇スペース過剰の懸念
需要が低下する中、多くの開発業者は倉庫の建設計画を縮小しているが、10~12月期は着工済みプロジェクトの完成によって1億5600万平方フィート超の新規スペースが利用可能になり、完工面積は四半期ベースで過去2番目の高水準となった。
クシュマン&ウェイクフィールドのロジスティクス&インダストリアル・リサーチ部門責任者、ジェイソン・プライス氏によると「新規に増える見込みの面積は需要を上回っているものの、明らかに建設は市況に対応して減速しており、全体の吸収率は抑制兆候が見られる」という。
それでも倉庫空室率は依然として低く、10~12月期の5.2%は、パンデミック前の19年末の4.7%をわずかに上回っただけで、過去15年の平均である6.4%を大きく下回っている。
企業は依然として賃料を上昇させるのに十分なペースで新規スペースを確保しており、10~12月期は産業用スペースの平均要求賃料は前年同期比10%上昇して、1平方フィート当たり9.79ドルとなった。特にテキサス州ヒューストン、ペンシルベニア州東部、南カリフォルニアといった主要な工業地帯では需要が旺盛だった。
今後数カ月間も数億平方フィートの新規開発が予定されており、業界専門家らは、リース活動の減速によって倉庫スペースが過剰になる恐れがあると警告している。新しいスペースの多くは、テナント未定の状態で建設される投機的プロジェクトだという。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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