海運業界、24年は波乱の年に~戦争・天候などの影響で

最近の紅海における敵対行為は、重要な物資を輸送する世界の荷主を混乱に陥れた。しかし2024年に大手輸送会社が直面しそうな問題はそれだけにとどまらない。

◇混乱の常態化

オートモーティブ・ニュースによると、世界貿易の90%を扱う海運業界は、パナマ運河を含む世界の主要航路に影響を及ぼす戦争、干ばつといった大きな混乱の可能性に直面しており、業界大手は、巨大コンテナ船、燃料タンカー、その他のコモディティー運搬船は、それらの要因に年間を通じて船舶の運航予定を乱される可能性が高いと見ている。この結果、ウォルマート、イケア、アマゾンなどの小売業者やネスレなどの食品メーカー、リドルなどの食料品店は、商品の遅延の増加やコスト増に悩まされる可能性がある。

中国の工場から欧米に商品を輸送している玩具メーカー、ベーシック・ファン(Basic Fun、フロリダ州)のジェイ・フォアマンCEOは「何か問題が起きた後、ある程度の正常な状態に戻る前に別の出来事が起こり、また状況が狂ってしまうという混乱の波で、これがニューノーマル(新しい日常)のように見える」と話す。

輸送運賃データサービス、ゼネタ(Xeneta、ノルウェイ)のチーフアナリストによると、24年はさらに、紅海の攻撃がアラビア湾にまで拡大して石油輸送に影響を及ぼすリスクがあるほか、中国と台湾の関係が悪化して重要な貿易航路が影響を受ける可能性もある。ウクライナ紛争は22年のロシアによる侵攻以来、穀物貿易に影響を与え続けている。

◇迂回でコストが倍増

紅海ルートは、海上輸送全体の10%以上、世界のコンテナ貿易の3分の1近くを担っているが、マースクなどの海運大手は、アジア~欧州間の重要な近道であるスエズ運河につながる海域でのミサイルやドローンによる攻撃を避けるため、航路を変更している。

欧州向けに石油や燃料を運ぶタンカーはスエズ運河の利用を続けているが、イエメンの武装組織フーシ派はガザ地区でイスラエルと戦うパレスチナのイスラム主義組織ハマスへの支持を示すために紅海で船舶を攻撃しており、ほとんどのコンテナ船はアフリカの南端を回る迂回ルートで商品を運んでいる。この迂回で船主の燃料費は往復200万ドルも上昇し、アジア~欧州間のスポットレートは40フィートコンテナ1個当たり3500ドルと23年の平均の倍以上に高騰。コスト増は消費者物価の上昇につながる可能性がある。

ゴールドマン・サックスは、20~22年の新型コロナウイルス禍による混乱ほどひどくはならないと見ているが、海運会社OL USA(ニューヨーク州)のアラン・ベアCEOは「コストに関して言えば、24年1~3月期は各社の財務は少しクレイジーになるだろう」と予想する。サプライチェーン可視化サービスのプロジェクト44(project44、イリノイ州)によると、スエズ運河の代わりとなるパナマ運河は、水位低下で通過する貨物が33%減少しており、こうした制限によって小麦、大豆、鉄鉱石、石炭、肥料のような商品のドライバルク輸送コストは23年後半に急上昇した。

悪天候の頻発も政治的緊張より直接的な影響を及ぼしている。ブラジルでは23年後半、アマゾンの歴史的な干ばつと北部の過度な降雨によって、大豆出荷のピークシーズンを数カ月後に控えた時期にパラナグア港で例年より長い船の順番待ちが発生した。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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