シリーズアメリカ再発見㉕
シカゴ名物球場アニバーサリー

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

シカゴの熱狂的なスポーツファンにとって、2014年は記念すべきアニバーサリー・イヤーだ。9月にシーズンが開幕するプロフットボール(NFL)のシカゴ・ベアーズは、本拠地「ソルジャーフィールド」が完成から90周年を迎える。そろそろ佳境に入ってきた大リーグ(MLB)で、最下位争いを続けているシカゴ・カブスは、本拠地「リグリーフィールド」が、4月にめでたく「100歳」の誕生日を祝った。
アメリカを代表する2つの名物球場と、シカゴの最新観光情報を紹介する。(*注:イベントの情報は掲載誌発行時点のものです)

シカゴ・ベアーズの本拠地、ソルジャーフィールド© City of Chicago

シカゴ・ベアーズの本拠地、ソルジャーフィールド
© City of Chicago

軟弱者はお呼びじゃない!
大熊たちがぶつかり合うSOLDIER FIELD

 シカゴの目抜き通り、高級ショップやデパートがキラキラと輝く、ミシガン・アベニュー。ダウンタウンを抜けて、左手にレイク・ミシガンを眺めながら、南へこの道を下っていくと、ソルジャーフィールドが見えてくる。

 スペースシップ(宇宙船)のよう、と地元の人は形容する。確かに、スタジアムの上部は銀色の円盤に似て見えるのだが、近づくと、基礎部分はクリーム色で、古代ギリシャの神殿といった方が合っている。
 オープンしたのは1924年で、現在のNFLチームの中で、最も歴史が古いスタジアムだ。普段は一般人が見学することはなかなかできないのだが、90周年にちなんだプレスの特別ツアーに参加した。

 「Welcome to the sacred ground」。ソルジャーフィールドのツアーガイドをして9年になる、トム・マッケンナさんが、入り口で迎えてくれた。
 聖地(sacred ground)という言葉は大げさかも知れないが、特別な場所であることは、中へ入るとすぐ分かる。
 ソルジャーフィールドは、第1次世界大戦で犠牲になった兵士たちを偲んで命名された。ギリシャ風の柱が続く回廊の壁には、歴史に名を残した軍人たちの名言が彫ってあり、メダルや、負傷した軍人に与えられるパープルハートの勲章が埋め込まれている。大きな星条旗と兵士の銅像も。今では、アメリカの同盟国のすべての戦争の犠牲者に捧げられているそうだ。

 ベアーズは、今年で創設95周年。アリゾナ・カージナルスと並んで、NFLで最も古いチームだ。通算700勝は、リーグ最多。殿堂入りした選手27人、功績をたたえて背番号を永久欠番にした選手13人、というのもリーグ最多の数字だ。「このままいくと、欠番にできる背番号がなくなってしまうかも…」と、マッケンナさんは誇らしげに心配してみせた。

 シカゴで一番愛されているスポーツ選手といえば、バスケットボール(NBA)のシカゴ・ブルズを6度優勝に導いた神様、マイケル・ジョーダンだ。その次が、ベアーズの偉大なランニングバック、ウォルター・ペイトンだ。1975年にドラフトされ、87年に引退するまでの13年間、ベアーズでプレーした。
 ラッシングヤードやタッチダウンなど、幾つものカテゴリーでリーグ記録を打ち立てた。
 77年、ミネソタ・バイキングスとの一戦で、275ヤードをラッシュして、当時OJシンプソンが持っていた記録を破ったが、実はその時ペイトンはインフルエンザにかかっており、38度以上の高熱があったという。

 ジョーダンも、97年のプレーオフ決勝、ユタ・ジャズとの第5戦で、脱水症状でふらつきながらも、ブルズを逆転勝利に導いた。私はその試合を生で見ていたのだが、その時の感動は今思い出しても相当なものだ。

 「Never Die Easy」のスローガンで知られたペイトン。記録以上に、人々の記憶に残る選手なのだろう。難病にかかっていることが分かり、1999年に45歳の若さで亡くなった。公葬は、ソルジャーフィールドで行われた。

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