人工知能は買い物をいかに変えているか 〜 応用範囲の継続的拡大は確実ながら消費行動への影響はゆっくり

小売業界のあり方が人工知能によってゆっくりながらも着実に変わりつつある。ミネソタ・スター・トリビューン紙によると、生成人工知能が現場従業員や消費者向けにも応用され始めていることがその背景にある。

▽舞台裏から対顧客へ

小売業界における人工知能の活用の場は、アプリケーションに表示する推薦商品から店舗内のデジタル表示まで、幅広い分野にわたっている。

人工知能の活用はこれまで、顧客の目に見えない「舞台裏」でおもに起こっていたが、最近ではターゲット(Target)のように、顧客らと直接的に接する機能に人工知能ツールを導入する事例が増えている。そのことは、人工知能の導入を加速させる大きな変化と言える。

「オンラインであれ実店舗であれ、商品の発見から購入までのすべての段階に人工知能が埋め込まれている」と、消費財小売業界コンサルティング会社スターシップ・アドヴァイザース(Starship Advisors)の常務取締役トゥーパン・バグチ氏は指摘する。

▽機械学習から生成人工知能へ

小売会社らは、需要予想や配送計画に何年も前から機械学習を活用している。最近の生成人工知能は、そうした動きをさらに一歩進める、とミネソタ大学経営大学院の助教授デイトン・スティーリー氏は説明している。

生成人工知能は機械学習とは異なり、構造化されていないデータから情報を取得し、動画や購入者たちによる評価、ソーシャル・メディア上での会話も取り込める。また、検知器群を介して顧客がどの商品を棚から取ったか、棚に戻したかを把握できるため、店舗内の陳列管理も向上させる可能性がある。

▽人工知能と人間の役割り分担

ただ、現時点では生成人工知能は自律的に業務を遂行することはできない、とスティーリー氏は指摘する。人工知能と人間にはそれぞれ得意分野があるためだ。

たとえば、人工知能は過去のデータがある場合にもっとも効力を発揮する。過去の気象データと在庫の傾向を照合して分析するといったことは得意だ。かたや人間は、新型コロナウイルス・パンデミックで発揮したように、文脈を理解して不測の事態に対応することについては人工知能よりすぐれている。

「向こう2〜3年で人工知能が急速に普及して人間による業務の流れに取って代わるだろう」「その時点で衝撃的なことが起こり、人間の方がはるかに敏捷に対応できる部分があることも明確化されるだろう」とスティーリー氏は話す。

▽消生成人工知能使用中での購入が可能に

人工知能は現時点において、商品の説明文作成や評価文の要約、商品推薦といった用途で力を発揮し、それらが購入のあり方を変化させていくと予想される。

オープンAIと提携してチャットGPTから商品を直接購入できるようにすると発表した小売企業もすでに複数ある。ターゲットは、人工知能が支援する1回の質疑応答で複数商品を同時に購入できるようにする計画を発表した。ウォルマートも同様の計画を10月に発表している。

小売大手らはその種の動きに関して、消費者の行動変化に順応するためだと説明している。

デロイトの調査では、2025年の年末商戦期の買い物に際して人工知能ツールを使う計画だと回答した消費者の割り合いは33%に上り、2024年とくらべて倍以上になった。

▽チャットGPTから直接購入可能に

アパレル・メーカーのエヴリーヴ(Evereve)は、イーコマース・プラットフォーム大手ショッピファイ(Shopify)の技術を採用して商品をオンライン販売している。そのショッピファイは、オープンAIと提携し、消費者がチャットGPTを使っている最中にチャットGPTから商品を直接買える機能を顧客(ブランドや小売会社らのウェブサイト)らに提供している。

「『夏の結婚式で着るドレスを探している。私は背が高くて引き締まった体型だ』のように目的や特徴を入力すると、それらに合致する商品を人工知能が見つけてくれる」と、エヴリーヴの最高技術責任者テイマー・セリム氏は話す。そういった商品検索に際しては、以前の会話や利用者の所在地も考慮することができる。

▽一歩進んだ個人化機能

ほとんどの小売会社らは、クレジット・カード決済やソーシャル・メディアの投稿といった膨大な消費者データを使って商品の推薦機能をすでに向上させている。そういった情報の流れがさらに洗練され、生成人工知能システムに活用されることで、似たタイプの買い物客が好む商品にもとづいて人工知能が予想するようになっている。

その結果、生成人工知能を使って商品検索している本人にとっては意外ながらも購買意欲を刺激される商品が推奨されるといった機能向上も期待される。そういった機能は、本人以外に関する材料をもとに個々の検索に対し個人化内容を提示するという次段階の検索体験をもたらすものだ。

▽実店舗での作業自動化と雇用への影響

人工知能は、実店舗の業務にも影響をおよぼす可能性がある。多くの小売店では、値札の変更のように手間のかかる作業をデジタル技術で自動化することを検討している。ウォルマートは電子値札を2024年から導入し始めている。

人材資源コンサルティング会社のチャレンジャー・グレイ&クリスマス(Challenger, Gray & Christmas)は、ことしの年末商戦に向けた小売業界の季節労働者の雇用が、2009年の不況時以来最少になると予想する。

ウォルマートとターゲットは、店舗勤務従業員向けの人工知能アプリケーションを導入しつつあり、質問に答えるチャットボットや在庫が減っている棚を通知するといった機能を店員たちに提供している。ウォルマートの同アプリケーションは40ヵ国語以上の通訳も可能だ。

▽年末商戦への影響は「限定的」

調査会社のガートナー(Gartner)では、人工知能の進歩による年末商戦への影響は「相対的に見て限定的」と予想しながらも、人工知能が小売業界を引き続き変化させていくという業界潮流が明確であることに変わりはない、という見方を明示した。

「小売会社らがこの種のツールを導入するほど、機能や性能が改善し、消費者もツールに馴染み、それを求めるようになるだろう」とガートナーの上席分析家ブラッド・ジャシンスキー氏は話している。ただ、「顧客の行動が変化するには時間がかかる」と同氏は述べた。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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