米国のビジネスにおけるチャットGPT化が加速 〜 独自の生成人工知能機能の開発よりも連携を選ぶ会社が急増

米国内の多くの会社は、生成人工知能の登場以来、オープンAIが提供する生成人工知能チャットボット「チャットGPT」のようなねめらかな対話体験を自社のオンライン・プラットフォームや独自のチャットボットで再現しようと模索してきた。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナルによると、各社は昨今、チャットGPTに対抗するよりも、チャットGPTと連携することが得策だと考えるようになっている。

▽チャットGPTフィケイションが鮮明化

米国内では最近、さまざまの業界の複数の会社がチャットGPT(ChatGPT)対応アプリケーションをあいついで公開している。それらのチャットGPT対応アプリケーションは、各社の独自アプリケーションとチャットGPTが連携するよう設計されている。いわゆる「チャットGPTフィケイション(ChatGPT-ification)」という動きだ。

4月には、スターバックス(Starbucks)やデトロイトのリトル・シーザーズ・ピッツァ(Little Caesars Pizza)がチャットGPTとの連携アプリケーションを発表した。先日には、ウィンダム・ホテルズ&リゾーツ(Wyndham Hotels & Resorts、ニュージャージー州拠点)が同様のアプリケーションを発表した。

それらのアプリケーションは、利用者がチャットGPTのインターフェイス内でブランドと直接対話し、製品やサービスに関する回答や助言を得るための手段として機能する。多くの場合、利用者が注文や支払いの準備が整った段階でそれぞれの会社のモバイル・アプリケーションやウェブサイトに移動して決済できるしくみだ。

▽消費者による検索行動様式の変化

オープンAI(OpenAI)は、各社のオンライン・プラットフォームやアプリケーションがチャットGPTと連携する機能を2025年10月に発表した。同社はさらに、その承認過程を簡素化したことで参加企業を急増させている。2026年初頭から現在まで、チャットGPTとの連携機能を発表した会社があいついだのはそのためだ。

その背景には、消費者が検索する際に人工知能を多用するようになっているという行動様式の変化がある。そのため、生成人工知能チャットボットと消費者のあいだの質疑応答のなかで自社がどのようにあつかわれるのか、あるいはまったく言及もされないのかが多くの会社にとってきわめて重要となっている。

そういった変化は、グーグル検索が普及し始めた2000年代初頭に起きた現象と酷似する。グーグル検索台頭当時、会社や事業、ブランドが検索結果にどのように反映されるかやどの位置に表示されるのかが重要になり始めた。マイクロソフト共同創設者のビル・ゲイツ氏は、ウェブサイト検索のその後の影響力を見抜けなかった、とのちに話したことがある。

▽商品提供側が検索の場にみずから出向く

自社のオンライン・プラットフォームやアプリケーションをチャットGPTと連携させる会社らのねらいは、グーグル検索に表示されるのを待つのではなく、お金を使おうとしている消費者のもとにみずから行くことで、商機を成約に結びつけることだ、と2月に同様のアプリケーションを出したロウズ(Lowe’s)の複合販路イーコマース技術担当上席副社長ニーリマ・シャーマ氏は説明する。

ただ、チャットGPTと自社アプリケーションを連携させることの事業上の価値は、現時点では黎明期のなかのさらに黎明期にあるため、依然として不透明だ。

ブランド各社は、消費者(チャットGPT利用者)に実際に発見される機会やデータ(利用者行動や利用者属性データ)共有、顧客関係所有権(顧客データを管理する権限)といった課題を解決すべき項目として挙げている。

▽チャットGPTが商品提供側と消費者の対話の主要手段に

オープンAIの広報担当者は、チャットGPTとブランドらのアプリケーションを連携させる機能には非常に強い需要と勢いがある、と話している。すでに数百の連携アプリケーションが稼働しており、新たなアプリケーションも毎日登場している、と広報担当は説明した。

「この生態系はまだ初期段階にある。チャットGPTは時間の経過とともに個人の生活や仕事における主要な製品およびサービスと対話するための主要手段になるだろう」と同社の広報担当は述べた。

▽どのチャットボットと連携すべきかを評価する会社ら

オープンAIにとって、チャットGPTを消費者体験の主要インターフェイスにすることは、早ければ2026年内にも予定されている新規株式公開(IPO)に向けた重要な要素だ。オープンAIは、アンスローピックをはじめとする競合社らの追い上げに直面しているものの、消費者にもっとも選ばれているチャットボットはチャットGPTだと考える会社は少なくない、と認識している。

会社らは現在、チャットGPTとの連携かクロードとの連携か、あるいはジェミニとの連携かを判断するために、人工知能大手らとの協議を重ねている。シアトル拠点の不動産取り引き向け技術大手ズィロー(Zillow)の人工知能部門責任者ジョシュ・ワイスバーグ氏は、「消費者にとって、目的の会社をいかに簡単に発見できるかが最大の課題だ」と指摘する。

現在、利用者がブランドとチャットGPTの連携機能を使うには、まずチャットGPTホーム画面のメニューからアプリケーション・ディレクトリーにアクセスして接続し、利用時に明示的に特定ブランド(会社)の機能を呼び出す必要がある。

メディア代理店ロースト(Roast)の革新&人工知能部門責任者ジョン・キャンベル氏は、「商品検索や旅行計画にチャットGPTを使っている平均的な消費者は、おそらくそれらのアプリケーションの存在を知らない」と、視認性の低さを懸念する。

▽チャットGPT内アプリケーションを自動起動できない三つの理由

会社らとオープンAIが両方のアプリケーションの統合度や連携度を引き上げて、消費者とチャットGPTとの質疑応答のなかで当該ブランドのアプリケーションが自動的に起動する設計にしないのには、1)消費者プライバシー、2)運用上の責任、3)利用者体験という三つの課題がある。

まず、特定の会社のアプリケーションをチャットGPT内で自動起動させるには、利用者の入力内容を第三者(会社)のサーバーに転送する必要がある。それは利用者プライバシーの侵害にあたることから、利用者が当該企業のアプリケーションを自主的に立ち上げることを意思表示する必要がある。

つぎに、チャットGPTのモデルが利用者の入力内容を誤解して、いわゆる「幻覚」を起こして誤った会社のアプリケーションを起動させ、課金や予約といったなんらかの行動につながった場合の責任問題がある。そのため、利用者が選んだことを明確にして責任の所在を明らかにする必要がある。

最後に、特定の会社やブランドを優先せず、公平な情報と機会を利用者に提供することで、利用者体験の質を維持する必要性という課題がある。たとえば、ウィンダム・ホテルズのチャットGPT連携アプリケーションが起動するよう設定されていれば、ほかのホテルにとって不公平であり、消費者にとっては選択機会が奪われることを意味する。

▽消費者データを共有したくない会社側

それらの課題は、チャットボット内広告モデルの未確立という現状を反映している。どのブランドのアプリケーションを優先的にまたは自動で起動させるかといった基準は、広告枠の販売事業と重なる側面が大きい。しかし、同市場はまた確立されていない。そのため、オープンAIや会社らは利用者の選択に委ねるというかたちをとっている。

チャットGPTに自社アプリケーションを完全に統合しない理由はほかにもある。リトル・シーザーズ・ピッツァの製品戦略担当国際責任者デレク・ション氏は、自社プラットフォームで最終決済を実行することで顧客との関係を維持し、関連データを直接受け取ることができるという見方を示した。

つまり、決済部分をチャットGPT内で実行可能にすれば、重要なデータをオープンAIと共有することになる。会社側はそれを避けたいと考えている。

▽オープンAIの管理ツールの機能性に不満

また、別の問題も浮上している。ウィンダム・ホテルズの最高宣伝責任者スコット・ストリックランド氏は、オープンAIが提供できる指標と自社が求める指標に隔たりがあると指摘する。

同氏によると、アップル(Apple)といったほかのアプリケーション流通プラットフォーム管理ツールにくらべると、オープンAIの類似ツールはデータ提供の速度が非常に遅い。

オープンAI側は、チャットGPTと顧客会社の連携アプリケーションに関する分析の機能拡充を加速する方針をすでに打ち出しており、そういった不満に対応する姿勢を明示した。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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