中村氏、シリコン・バレーで起業 〜 企業と闘ったノーベル物理学賞受賞者
- 2014年10月8日
- ハイテク情報
2014年のノーベル物理学賞に決まった日本人3人の一人である中村修二氏は、日本で雇用主を相手に闘ったサラリーマンとして有名だ。
雇用主相手の訴訟で数百万ドル(約8億円)を勝ち取った中村氏は、その後、2008年にシリコン・バレーでベンチャー企業ソラー(Soraa)を共同設立し、発光ダイオードの研究を続けている。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、日亜化学工業に20年間勤務し、現在はカリフォルニア大学サンタ・バーバラ校で教授を務める中村氏は、2004年に出版された同紙とのインタビューで、自らを「企業に全身全霊を捧げる典型的な日本人サラリーマン」と紹介した。
日亜は1990年に、中村氏の青色LED(発光ダイオード)に関する発明の特許を取得し、中村氏に2万円のボーナスを支払った。
1990年代半ばから米国で外国人研究者と活発に交流を始めた中村氏は、2万円という報酬がいかに小さいかに気付いたという。
「(米国で会った人たちは)私が(日亜から)数億から数十億円の支払いを受けたと思っているようだった。実際の報酬を伝えると、『奴隷中村』と呼ばれたものだ」と、同氏はインタビューで述懐している。
中村氏は1999年に日亜を退社し、発明対価が正当ではないと主張して2001年に日亜を日本で訴えた。2004年1月に東京地裁は、中村氏の発明による日亜の潜在利益を1200億円以上とはじき出し、その半分の604億3000円を得る権利が同氏にあると判断して、中村氏が請求した200億円の支払いを同社に命じた。
しかし、日亜が控訴した結果、東京高裁は同社が約8億円を同氏に支払うことで和解するよう勧告し、両者は和解した。「日本の司法は腐っている」と同氏は判決後に記者団に述べた。
同裁判は、日本の企業が社員の能力を搾取している実態に関し、発明対価を求める社員個人の権利を見直すきっかけになった。
日亜の広報担当者は中村氏の受賞が決まったことを受けて、青色LEDは中村氏が一人で開発したものではなく、日亜とその従業員の努力の賜物という従来の見解を繰り返した。
中村氏は「LEDの省エネ技術が、世界的なエネルギー消費量節減と照明費用削減に役立つことを望んでいる」と喜びを語っている。
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