再度、留学のススメ

文&写真/福田恵子(Text and photo by Keiko Fukuda)

名古屋駅でホストファミリーと涙の別れ(写真提供:名古屋市)

以前に、たとえ短期であっても海外留学がいかに将来を左右するかということ、国際交流と大上段に振りかざすよりも、違う国の個人同士が触れ合うことが異文化理解につながるということについて書いた。そして、今回もまた改めてそのことを実感する機会に恵まれた。

10月1日、ロサンゼルスのホテルで今年の夏の3週間を日本で過ごしてきたロサンゼルスの高校生4人による「日本での経験のプレゼンテーション」が開催されたのだ。彼らはロサンゼルス名古屋姉妹都市委員会(LANSCA)が数十年にわたって実施している、両都市間における交換留学プログラムに選出された4人だ。同プログラムは、ロサンゼルスから名古屋へ学生を送った年の翌年は名古屋からロサンゼルスに学生が渡るという方式で、ホストファミリーに関しても前年に子どもを送った家庭が務める。前回の交換留学は2019年だったが、パンデミック発生により、プログラムは実に今年4年ぶりに再開された。

さて、同プログラムの委員長で過去に引率教師を務めた経験があるエリカ·ロペスさんによると、今年、交換留学生に応募した高校生は59人だった。つまり、彼らはおよそ10人に1人の確率で選ばれた民間大使というわけだ。

プレゼンターの1番手となったサマンサ·チャンさんは、ロサンゼルスで通う高校と交換留学で通った名古屋市の菊里高校を細かく比較し、「私の高校ではスポーツの種目別にグラウンドが分かれているが、菊里では一つのグラウンドを皆で時間を区切って共有している。驚いたのは、トイレなども生徒たちで掃除すること。しかも常に美しい。ランチタイムにはおにぎりやサンドイッチを売っている売店に長い行列ができる。私は売店でアイスクリームを売っているのを最後の日に知った。もっと早く知っていたら良かった。また、大学進学対策には、日本の高校生には塾が欠かせないようだ」のように観察した結果を発表した。次に発表したホールデン·ヤンさんは「私の目から見た名古屋」というテーマで、「名古屋の町はロサンゼルスよりも整然としている。ホストファミリーの家の周辺も散歩したが、非常に静かで車がほとんど走っていなかった」と感想を述べた。

一生の繋がり

次にエレイン·イエグヤンさんが「名古屋の高校生はとてもフレンドリーで、私に『英語を勉強したい』と話しかけたり、『ロサンゼルスはどんなところ』と聞いてくれたりした。彼らのホスピタリティに救われた。私は多くの人に助けられ、彼らに対して常にお礼を言っていた。それくらい感動するほど皆がやさしかった」と学校での経験を話した後、「特にホストファミリーにはお世話になった。これからも一生、繋がり続けたい」と、貴重な出会いとなったことを強調した。

最後のジョセフ·キムさんは、「名古屋で食べた美味しいものトップ3」を発表した。「3位は寿司。2位はひつまぶし。そして1位はホストマザーが作ってくれた家庭の味、とんかつだ」と、その味を味わうためにも必ず名古屋を再訪したいと語った。

彼らのスケジュールは、最初の2週間に名古屋に滞在し、最後の1週間、京都、広島、東京を訪れるというものだった。LANSCAのメンバーである私は、最後の1週間のためにホテルを探して予約をする役目を担っていた。引率教師を含め彼ら全員が日本初体験だと聞いていたので、ロサンゼルス育ちで公共交通機関に慣れていない彼らのためにホテルはできるだけ駅の近く、しかも朝食付きが望ましいなどといろいろと考えて決めた。都合で渡航前のオリエンテーションも空港への見送りも行けなかったので、今回が彼らとの初対面となったのだが、プレゼンテーションを聞き、異国で新たな経験を積んできた彼らの健闘を、私は親でもないのに心から誇らしく思った。そして、なんらかの形で日米の架け橋として貢献する彼らの将来の姿が透けて見えた。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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