プロベート(検認手続き)とは
長くアメリカに住んでいる方にもあまりよく知られていませんが、アメリカの遺産相続手続きは日本のそれとは大きな違いがあります。家族関係が複雑なうえに戸籍制度がないアメリカでは、相続が発生した時に故人の遺産を相続する権利を持っている人を書類上で確かめることができません。また、遺産分割後に争いが生じることを防ぐため、たとえば子供がひとりしかいない家庭で親が亡くなり、遺産分割について争いが生じる要素がない場合でも、遺産が一定額(2023年度で16万6,250ドル。現在のレートで約2400万円弱)を超える場合には “リビングトラスト” を事前に作成していなければ裁判所が介入する「プロベート(Probate)」という手続きを経ることが法律で決まっており、これを避けることはできません。プロベートには最低でも約1年半前後という長い時間と高額な費用がかかりますが、それだけでなく、手続きが終わるまでは遺産が凍結されてしまいます。家族関係や遺産分割が複雑なケースであれば、プロベートに5年以上の年月と数万ドルもの費用がかかってしまうこともあります。つまり、アメリカ国内で家を所有していたり、16万6,250ドル以上の資産を持っていたりする場合には、プロベートを避けるために必ずリビングトラストを作成しておく必要があります。
リビングトラスト
リビングトラストとはプロベートを回避するために必要となるもので、一般的に日本人がイメージする遺言書にあたるものです。リビングトラストでは、作成者が亡くなったあとにトラスト資産を管理する管財人(Trustee)や遺産を受け取る相続人(Beneficiary)を指名し、資産目録を作成し、各相続人に何をいくら遺したいかなどを記載します。リビングトラストを作成したらFunding を行い、リビングトラストを完成させます。これは所有する不動産や銀行口座などをトラスト名義に変更したり、リタイアメント口座や生命保険の受取人にトラスト名義を加えたりする手続きです。また、リビングトラストを作成する際には遺言書(Will)、Financial Power of Attorney(財産に関する委任状)、Health Care Power of Attorney(医療看護に関する委任状)も同時に作成します。この4つを合わせたものが「エステートプラン」です。エステートプランで作成される遺言書は包括的遺言書と呼ばれるもので、トラスト名義になっていない資産をリビングトラストに入れることを主な目的としており、日本でいう遺言書とは異なります。日本風の遺言書を遺される方も少なくありませんが、遺言書が法的に有効になるためにはいくつかの要件を満たしていることが必要ですし、たとえ遺言書が有効であることが認められてもリビングトラストがなければプロベートを回避することはできません。
Trustee(管財人とは)
管財人とはトラスト資産を管理する人で、不動産を含むトラスト名義の資産や口座の管理や運用などのすべての手続きを行う権限を持ちます。リビングトラストの作成者が生存中で意思能力があるうちは作成者ご自身がトラスト資産の管財人ですが、意思能力がなくなったり死亡したりした場合のために後任受託者 (Successor Trustee)を選んでおきます。管財人はアメリカに居住する18歳以上の方であることが必要です。お子さんがいる場合には、お子さんが管財人および相続人である場合がほとんどですが、アメリカ国内に18歳以上のお子さんやご親族がおられない場合には、信頼できるご友人や専門業者(Professional Fiduciary)を管財人に選ぶことができます。この場合、管財人は常に相続人の利益を守ることが義務付けられています。相続人には年齢制限はなく、居住地もアメリカ国外でも問題ありません。
日本人の遺産相続は滞在ステータスによってもさまざまな税金問題も関係してきますので、必要に応じて税理士や会計士などの専門家に相談されることが大切です。
Kimura London & White LLP
交通事故・人身事故、契約関連・雇用・ビジネス上のトラブル、民事訴訟、エステートプラン(リビングトラス・遺言書・委任状)の作成。日本語の書類の公証(Notary)- 遺産相続関連や年金申請など。
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