連邦政府の補助金に誘われて、最近は多くの電池メーカーや自動車メーカーが米国での電池工場建設に投資する計画を発表しているが、早くから米国で電気自動車(EV)用電池製造を手掛けるパナソニックは、経験を通して多くの教訓を学んでいる。
■フル稼働までには予想外の時間
ウォールストリート・ジャーナルによると、パナソニックは2015年、ネバダ州で米国初の大規模なEV電池工場の建設を開始した、従業員の訓練や機械の調整を経て、現在はアメリカンフットボール場90個分の面積の生産ラインを24時間稼働させ、人の指ほどの大きさの電池を年間約20億個生産している。
しかし当初は課題も多く、最大の問題の一つは、わずかな湿気に触れただけで1回の生産分全てを捨てなければならないこともある繊細な電池製造の技術を作業員に習得させることだった。
また、米国の安全規制や操業条件の違いで、アジアから運んだ機器をそのまま米国の組立ラインに使うことができず、米国向けにカスタマイズされた機器が不足した。さらに、自動車メーカーと共同で電池を製造する場合、もめ事や納期遅れを防ぐため、前もって綿密に計画を立てる必要がある。
EV大手のテスラと共同でギガファクトリー(大型工場)を設立したパナソニックは、当初生産量の拡大に苦心し、厳しい納期を要求するテスラのイーロン・マスクCEOからは、時に同社がテスラのEV生産を妨げていると非難された。
電池生産の共同事業は、最近でこそテスラの販売急増で業績が好転しているが、19年後半に初めて四半期利益を出すまでは何年も赤字が続いた。
パナソニックのEV電池事業責任者、高本泰明氏は、リチウムイオン電池の生産を伝統的な東アジア以外に移すことの難しさを過小評価していたといい、米国人労働者の手が大きすぎてアジア製の機械を効率的に操作できないことに驚いたという。電池生産の経験がない労働者を訓練し、設備や生産工程を適応させ、生産を増強するには予想より1~2年長くかかった。
■新工場はより迅速に展開か
パナソニックのEV電池部門は、ネバダ・ギガファクトリーの敷地の半分以上を占め、現在容量換算で年間38ギガワット時(GWh)分の電池を生産している。これは標準的な航続距離のテスラ「モデル3」約60万台分に相当する。
パナソニックは、ネバダ工場の生産能力拡大を考えているが、同州では労働者が不足している。このため同社は22年、ネバダ北部よりも大量の労働力が期待できるカンザス州デソトに40億ドルを投じて工場を建設すると発表した。
また「インフレ抑制法などを追い風にパナソニックはデソト工場とほぼ同規模の工場を新たに建設する計画で、候補地としてカンザス州とオクラホマ州を検討している」との報道もある。高本氏によると、新工場の候補地選びでは、税制優遇措置や労働者誘致の見込みなどを検討する必要がある。これからカンザスで募集を開始し、もし予想以上に多くの労働者が確保できれば、拠点の配置を考える上でそれも参考になるという。
同氏は、カンザス工場はネバダ工場より短期間でフル稼働に到達できると予想しており「私たちは6年間で多くのことを学び、その教訓を生かせる」と語った。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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