新型コロナウイルスのパンデミック(大流行)期にサンフランシスコを出て行ったIT業界のリーダーらが、元の拠点に戻り始めている。
◇強固な産業構造
ウォールストリート・ジャーナルによると、新型コロナの大流行時には、自治体は機能不全に陥り、生活費も高すぎると批判しながらシリコンバレーの投資家、経営者の多くが別の都市に移って行った。ハイテク企業の創業者らは当時、ベイエリア(サンフランシスコ周辺)以外でも資金調達はできると宣伝し、従業員には在宅勤務を奨励した。
しかし4年が過ぎた今、サンフランシスコでは技術産業が復活している。起業家や投資家は人工知能(AI)の熱気に沸く街に再び集まり、シリコンバレーのリーダーらは地元の政治に関与し、家族や企業にとってもっと安全な場所にするため市の施策や活動に資金を投入。さらに投資家らは、新興企業にベイエリアに戻って従業員をオフィスで勤務させるよう働きかけている。
ニューヨークのベンチャー企業シャイン・キャピタルの創業者モー・コイフマン氏は「過去50年以上にわたって築かれたサンフランシスコのような産業構造は、パンデミックなどですぐ滅びるものではない」と語る。一流のベンチャー企業がベイエリアにいる必要がある理由は、スタンフォード大などの大学に近いことだという。シャイン・キャピタルは1月、サンフランシスコにオフィスを開設した。
◇頭脳集団の拠点
民泊サービスのエアビーアンドビーや配車サービスのドアダッシュなどに出資し、シリコンバレーで最高のベンチャー企業発掘者の一人といわれるキース・ラボイ氏は、2020年にフロリダ州マイアミに移り住み、新興企業の創業者らにも「マイアミは比較的安全で税金が安く、技術者に優しい街だ」と移住を勧めていた。しかし、支援した企業のいくつかは技術者を引き付けやすい別の場所にオフィスを移転または開設しており、現在は氏自身も新しい企業に移ったため、月に1週間はサンフランシスコに滞在する生活をしている。
企業向けクレジットカードを提供するフィンテック企業ブレックス(BREX)の共同創業者、ヘンリケ・デュブグラス氏とペドロ・フランチェスキ氏も、パンデミックの間はそれぞれロサンゼルス、ニューヨーク、マイアミへと移り住んだが、23年末には投資家からの圧力を受けてサンフランシスコに戻った。
データ管理ツール開発企業エアテーブル(Airtable)のハウイー・リューCEOは、パンデミック期間中はロサンゼルスにいたが、最近は顧客と会うためにサンフランシスコで過ごす時間が増えている。機械学習用データ処理サービスのスケールAI(Scale AI)やデザインツール開発フィグマ(Figma)の投資家であるエリック・トレンバーグ氏も、最近マイアミからサンフランシスコに引っ越し、新しいメディア企業の開発に取り組んでいる。
サンフランシスコの進歩的な政治文化を声高に批判し、パンデミック時にはテスラの本社を北カリフォルニアからテキサス州オースティン郊外に移したイーロン・マスク氏も、X(旧ツイッター)や23年に法人化した新興AI企業xAIを監督するためにサンフランシスコで時間を過ごしている。
ベンチャー投資企業CRVに所属し、エアテーブルの取締役でもあるマックス・ゲイザー氏は「頭脳集団はサンフランシスコにいるというのが現実。技術革新のスピードが速いAI分野は特にそうだ」と話している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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