ステイト・ファームが推進中の人工知能活用拡大に不満噴出 〜 保険代理店と顧客らから厳しい反響

住宅保険最大手のステイト・ファームが進める人工知能活用の業務改革をめぐり、顧客や代理店から反発の声が相次いでいる。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、同記事の反響は非常に大きく、顧客や代理店の計1000件からさまざまの感想や報告が寄せられている。

▽顧客情報即時要約人工知能ツールが誤表示

イリノイ州のある代理店の場合、同社が導入推進中の顧客情報即時要約人工知能ツールを試したところ、契約開始日が実際より約20年もずれて表示され、支払い遅延がなかったにもかかわらず延滞ありと誤表示されたと明かした。

創業104年を迎えるステイト・ファーム(State Farm、イリノイ州拠点)は、「ヒューマン・プラス・デジタル」戦略を掲げ、人と人工知能の融合によって市場での優位性を長期にわたって維持しようと考えている。

同社は、全米の大半の州に1万9000ヵ所の代理店を持ち、金融機関のなかでも屈指の規模を誇る。同社は、代理店を人工知能に置き換える意図はないと強調するが、人工知能技術活用によって代理店業界での統廃合が進み、代理店の大規模化と小規模代理店の閉鎖につながる可能性を示唆している。

▽チャットボットに対し「ひどい」「腹立たしい」

一方、自動応答システムに対する顧客(保険加入者)らの反発は根強い。回答した顧客約900人の多くが生成人工知能チャットボットについて「ひどい」「腹立たしい」「最悪」と酷評した。

ニュージャージー州モアズタウンのジョー・ソンク氏は、「地元代理店の手厚い対応こそステイト・ファームを使い続けてきた理由なのに、いまでは人間の顧客担当者にたどりつけない」と話した。

ただ、顧客の一部には、人工知能による合理化がコストを削減するのではないかという歓迎の声もある。ウィスコンシン州ミルウォーキー在住のダニー・ベセス氏は、「保険料の値上げに何年も苦しめられてきた」「効率化が進めば値下げも期待できる」と話した。

▽過去10年間に不具合や障害が多発

匿名を条件に取材に応じたアラバマ州の代理店はステイト・ファームについて、「すばらしい保険会社だが、技術会社としては最低だ」と話していう。

全米ステイト・ファーム代理店協会(National Association of State Farm Agents)のロバート・E・オコナー・ジュニア顧問弁護士は、「ステイト・ファームの技術の信頼性に代理店らが懸念を抱いている」「過去10年、導入された技術にはつねに不具合があり、障害も多発してきた」と指摘する。

ステイト・ファームの広報担当者は、「契約者所有の相互会社」(保険加入者らが所有者となる保険会社の形態)である点を踏まえ、「短期的な導入速度ではなく、長期的に顧客のためになるかを基準に技術投資を判断している」と説明した。

▽新技術を導入するほど「代理店側の仕事は増える」

アリゾナ州メサで最近に引退した代理店主のトム・ダフィー氏は、「ステイト・ファームが新技術の導入に取り組むほど、代理店側の仕事は増える」「人工知能も例外ではないだろう」と話した。

ダフィー氏によると、同社の代理店向けチャットGPT(ChatGPT)ツールは、知識の更新時点が前年にとどまるという。スーパーボウルの優勝チームを尋ねると、2024年のカンザス・シティー・チーフスを最新情報として回答する陳腐さだ。

同社の広報担当者は、「代理店や従業員の顧客対応業務が簡便化されたかどうかが成功の指標だ」と話している。顧客情報要約ツールの利用は代理店の任意だが、93%の代理店が利用を選択している、と広報担当者は説明した。

▽競合社でも加速する人工知能技術の導入

多くの代理店は、人工知能の活用が代理店の立場を弱体化し続けると主張する。ステイト・ファームは、代理店契約の見直しを進めており、その内容は代理店にとって厳しいものばかりだ。

同社の社内ではそういった方針に対する反発が強いことから、同社は、改革の一部を撤回した。廃止予定だった代理店向け退職給付制度は、一定の業績基準を条件に2031年まで存続することが決まった。ただ、「競争環境は変化している」「現状維持という選択肢はない」と同社は釘を刺している。

人工知能技術の活用は競合社でも加速している。オールステイト(Allstate、イリノイ州拠点)のトム・ウィルソンCEOは、人工知能による直販を3州で試験導入している。オールステイトはまた、代理店と顧客の通話を聞き取りながら助言する人工知能基盤ツール「カスタマー・エンゲイジメント・サイドキック」も導入中だ。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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