毒素でHIV撃退できるかも〜マウス実験では成功

 エイズウイルス(HIV)に感染しているマウスに抗体と細菌毒素を組み合わせて投与することで、臓器や骨髄内の感染細胞を探し出し、ウイルスを殺すことに成功したと、ノースカロライナ大学の研究チームが発表した。新しいHIV治療法になり得ると期待されている。

 ロサンゼルス・タイムズによると、同大学のウイルス学者J・ビクター・ガルシア氏が主導するチームは、2006年に開発した人間の免疫システムを持つ特殊な「BLTマウス」を実験に使った。BLTマウスは人間と同じようにHIVウイルスに感染させられ、ウイルス血症になり、既存の抗レトロウィルス薬(ARV)に対しても同じ反応を示すがエイズは発症しない。

 既存のARVは毎日服用すればウイルスの活動を抑えられるが、患者の体内ではウイルスの遺伝物質リボ核酸(RNA)が生産され続けるため、ウイルスの維持を助けている細胞を殺すことができれば、症状を抑えつつ治療を進めることができると考えられている。

 今回の研究で使われた抗体は、HIVが人間の免疫細胞に入るのを助ける外膜タンパク質GP-120を認識することができ、これに乗せて極めて効果的な細菌毒素を運び、ウイルスを攻撃した。この結果、ARVのみを投与したマウスに比べ、骨髄内のウイルスRNAは1000倍減り、胸腺(せん)、脾臓(ひぞう)、リンパ節、肝臓、肺、腸、血球などでも約10倍減少して、ウイルスRNAを作っている細胞の数も約100倍減少した。

 報告書はオンライン医学誌PLOSパソジェンに掲載された。

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