EVの駆け込み購入が増加~連邦税控除の終了目前

電気自動車(EV)に対する7500ドルの連邦税額控除が9月30日に終了するのを前に、全米でEVの駆け込み需要が発生している。

◇コロラドで大きな伸び

ウォールストリート・ジャーナルによると、連邦政府は9月末までに購入の契約をすれば税控除の適用が可能としているため、ディーラーは在庫処分を急ぎ、「これ以上の好条件は二度とない」という格安のディール(取り引き)を提供している。JDパワーは、この駆け込み需要で8月のEVの市場シェアは過去最高に達すると予想している。

州別に見ると、特にコロラド州でEV販売が大きく伸びている。人気モデルの日産「アリア」SUVは全米販売の3分の1をコロラドのディーラーが占めるほどだ。Tynan’s Nissanでは、5万7000ドルの「アリア」を月額169ドルでリースしており、2025年のトップセラーとなっている。

こうした低価格はEV初心者らも突き動かしている。環境への配慮からEVを買いたかったが値段が障害だったというバス運転手の男性(39)は「優遇制度がなければ到底手が出ない」と考え、Tynan’s Nissanで真剣に「アリア」の購入を検討している。

コロラドでは、州のインセンティブや急速充電網の整備促進を背景に4~6月は新車販売の約2割がEVと、全米平均の2倍以上に達している。

◇前例のない激安リース

同州デンバー南部の起亜ディーラー、Emich Kiaには、EVの超格安リース契約を求めて大勢が来店している。同店では、8月末時点で小型の電動SUV「ニロ」が月額40ドルで、「EV6」は月額100ドル未満でリース提供され、6万5000ドルの3列シートSUV 「EV9」でさえ189ドル(いずれも税抜き)だった。

曽祖父の代から車のセールスマンという同店のゼネラルマネジャー、コルト・エミック氏によると、代々伝わる経験則として「月額リース料が車両本体価格の1%なら消費者にとって最高のディールだ」というが、今回のEVリースはそれよりはるかに条件が良く「前例がない」ほどだ。

同店で「EV6」の試乗をしようとしていた元医師の男性(80)は、長年のEVユーザーで現在は日産リーフを所有しており「次の車を買うつもりだったので、どうせなら補助金がなくなる前に買いたい」と話した。

昨年ボルボ「C40」を購入したばかりという男性(55)も、価格に引かれて今回は月額39ドルのフォルクスワーゲン「ID.4」を狙っているという。

◇一時代の終わり

一方、多額の補助金で長年EVの普及を後押ししてきた連邦の優遇制度や燃費規制の撤廃は、米自動車産業の一時代の終わりを意味し、今後ディーラーは販売戦略の転換を迫られることになる。メーカーもEV生産の抑制を始めており、ゼネラル・モーターズ(GM)は「GMCハマーEV」や「キャデラック・エスカレードIQ」の生産調整のため、デトロイト工場で約360人を少なくとも1カ月休職させている。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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