米自動車大手、大型ガソリン車に回帰~規制緩和で戦略シフト

米国の自動車業界では、電気自動車(EV)需要の失速とトランプ政権による環境規制の大幅な緩和を受け、大型ガソリン車への回帰が加速している。

◇ICE、息吹き返す

ウォールストリート・ジャーナルによると、トランプ政権は、カリフォルニア州から独自の排ガス規制権限を剥奪し、温室効果ガス排出規制を撤廃、企業平均燃費(CAFE)非適合への罰金制度を廃止するなど、従来の厳格な環境政策を見直している。これを受けて自動車大手は迅速に戦略を調整しており、EV関連投資を縮小し、SUVやピックアップトラックといったより収益性の高い大型モデルに注力する方針を明確にしている。

フォードは、カナダで3列シートのEVを製造する計画を中止し、そこで大型ピックアップを製造する。ジム・ファーリーCEOは「今後数年間で数十億ドルのチャンス」と語った。

ゼネラル・モーターズ(GM)も、2035年までに内燃エンジン車(ICE)生産を廃止する目標を最近まで掲げていたが、今は投資家らにガソリン車を維持する利点を説いており、ニューヨークでのEV用モーター製造計画を中止して、V8ガソリンエンジンの生産を拡大している。

ステランティスは、トランプ大統領の新しい規定を「ディーラーにガソリン車とEVのより良い組み合わせを配置する好機」と評価。アントニオ・フィロサCEOは「これは当社に多くの追加利益をもたらす」と話している。同社は7月末、ミシガン州の工場でシフトを追加し、部品不足で供給が滞っていた人気の高い「ラム1500」トラックの生産を急拡大し始めた。

こうした動きの背景には、最近の政策変更によって燃費規制違反に伴う罰金や排出権購入の必要がなくなったという状況がある。3社は22年以降、こうした規制に対応するため計100億ドルほどを費やしてきた。

◇今は延長戦

各社とも、完全にEV開発を放棄したわけではない。フォードは近く新たなEV戦略を発表する予定で、一部の極端な規制緩和には反対している。GMのメアリー・バーラCEOも「いずれEVが主流になる」との見解を維持する半面、今はICE車の利益を最大限に味わえる「延長戦」に突入したと認識しており、EVからの方向転換を鮮明にしている。

ディーラーでも同様の傾向が見られ、ルイジアナ州ニューオーリンズで複数の販売店を運営するマット・バウワーズ氏は「今消費者が求めているのは、EVではなく燃費の良い小型SUVかよりパワフルな大型車だ」と話し、規制緩和でメーカーは人々が本当に望む車を造れるようになったと評価している。

需要増と競争の激化を受けて、利益率の高い大型SUVやピックアップは価格も上昇する見通しで、調査会社オートフォーキャスト・ソリューションズのサム・フィオラニ氏は「EVでの損失は減り、ICE車での利益は増える」と予想する。

一方、こうしたトラック頼みの戦略は長期的には破綻する可能性もある。メイン州を拠点に販売店を経営するアダム・リー氏は、メーカーがEVの改善を怠ると「米国は世界で唯一、燃費の良い車両やEVを受け入れない国になってしまう」と心配している。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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