米国の関税と人工知能が中古アパレル業界を活況させる 〜 業界大手スレッドアップの好調が示す想定外の需要増

米オンライン古着販売大手スレッドアップがジョージアで運営する倉庫(物流センター)では、毎日およそ4万点の中古衣料品のオンライン注文が処理されている。CNBCによると、同社の物流網は米国内4拠点に広がり、その規模は一部のファスト・ファッション大手らに匹敵するまでになった。

▽新品への関税が中古品の価値を上げる

「ここ(ジョージア州スワニーにある約60万平方フィートの物流センター)は、350万点以上を収納できる世界最大のガーメント・オン・ハンガー(ハンガー吊り下げ式)システムだ」とスレッドアップ(ThredUp)の事業運営担当上席責任者ジャスティン・ピーナ氏は語る。

世界の中古アパレル市場は急成長だ。調査会社グローバルデータ(GlobalData)によると、その市場規模はアパレル市場全体のほぼ3倍の速度で成長し、2029年までに3670億ドルに達する見通しだ。その背景には、関税と人工知能の存在がある。

ドナルド・トランプ大統領が導入した関税は、製造業を国内に呼び戻す目的だが、実際には、その影響をもっとも受けたのは輸入依存度の高いファッション産業だ。米国で販売される衣料品の約97%は輸入だ。その多くは中国やベトナム、バングラデシュ、インドからの輸入だ。

「新品の価格が関税によって上がれば、再販(中古)品の存在価値が上がる」「それは一過性の流行ではない」とスケイラブル(Scalable)のジャスミン・エンバーグ共同CEOは指摘する。

▽人工知能システムが衣類を撮影、分類、価格設定

スレッドアップのジェイムス・ラインハートCEOは、その動きがすでに表面化していると話す。「売り上げは二桁成長、粗利率は約80%、運営はすべて米国内で完結している」と同氏は話す。同社の2025年第3四半期の売上高は前年同期比34%増で、新規顧客獲得数は過去最多となり、前年同期比54%増と急伸した。

「関税によって小売価格が20〜30%上がれば、中古品には大きな価格競争力が生まれる」「中古品は関税対象外なので、需要が中古品に流れている」とウィリアム・ブレア(William Blair)のディラン・カーデン調査分析家は説明した。

スレッドアップの倉庫では、自動化システムと作業員らが一緒に作業する。人工知能システムが衣類を撮影、分類、価格設定し、1時間に数千点を処理する。

「再販品(中古品)の販売を劇的に増やすカギは技術にある」とラインハート氏は断言する。「人工知能を導入したことで、商品検索から用途、着合わせに応じた推奨、個人化まで、購買意欲を刺激する諸機能を効果的に強化できる」と同氏は話した。

▽大規模の人工知能技術導入契約があいつぐ

オンライン・アパレル販売業界ではそういった動きが非常に活発化している。ファッション業界向け技術新興企業フィア(Phia)は、人工知能を使って小売&中古服市場の膨大な商品リストを数秒で横断検索できるソリューションを開発し、アパレル小売会社らに提供している。

フィアによると、特に中古品業界では昨今、1件あたり数百万ドル規模の人工知能技術導入契約があいついでいる。衣料品のオンライン小売業界において注文履行(受注処理)の需要がそれだけ急増しているということだ。

もともとは製造業の国内回帰をねらった関税引き上げは、米国の中古衣料品市場活性化という副産物をもたらした。それが人工知能による合理化で成長が加速している。「衣料品小売の未来はいまよりももっと持続可能になり、古着はその中心になるだろう」とラインハート氏は述べた。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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