人工知能のトークン予算を工学者報酬の一部と位置づけ 〜 シリコン・バレーで広まる新たな発想

テッククランチ誌によると、人工知能ツールを使うための通貨となるトークンを従業員報酬の一部に組み込むという発想が、シリコン・バレーで語られるようになっている。

▽報酬をトークンで払うのではなく工学者に認められた権利として解釈

人工知能のトークンとは、簡単に言えば演算力の利用権であり、自由に使える演算資源の価値でもある。

トークンは、クロード(Claude)やチャットGPT(ChatGPT)、ジェミニ(Gemini)といった生成人工知能ツールを従量課金制で使用する際の支払いに使うことができる。それを、従業員の給与や賞与、自社株購入権と組み合わせて報酬の一部として考えるという発想だ。

特に工学職では、代理人型人工知能(agentic AI)を使って演算処理といった作業を自動化できればできるほど生産性が高まるため、生産性の高い工学者の「人件費」としてトークン予算を割り当てるという考え方が生まれている。

ここで明確化される必要があるのは、雇用主が報酬の一部をトークンで払うということではまったくない点だ。工学者が使えるトークンを一種の福利厚生のような権利としてあつかうという考えに近い。

▽フアンCEO、基本年俸に追加される報酬という見方を明示

そういった議論を刺激したのはエヌビディア(Nvidia)のジェンスン・フアンCEOだった。同氏は、3月なかばに主催した開発者向け会議「GTC」において、自社の最高水準の開発者の場合、人工知能の演算力に費やす費用が年間25万ドル前後に達するため、基本給の半額ぐらいをトークンとして追加で受け取っている計算になり、それが人材採用の際の魅力として業界の標準になる、という見方を示した。

つまり、開発者が自由に使える電算資源(演算に必要な電算力)の価値を一種の報酬として換算するという発想だ。

ただ、その考え方をフアン氏より前に語った人物がいる。セオリー・ベンチャース(Theory Ventures)のトーマス・タングズ氏だ。タングズ氏は2月なかばに、新興企業らが推論コストを「工学者報酬の4つ目の構成要素」として計算に入れるようになっていると記事に書いた。最初の三つは、基本給、現金賞与、そして株式報酬だ。

▽工学者が使えるトークンの量で生産性が左右される

この種の議論が生まれる背景には代理人型人工知能の躍進がある。1月にリリースされたオープン・ソースの自律型人工知能代理人プラットフォーム「オープンクロー(OpenClaw)」がその議論を加速させた。

オープンクローは、利用者が眠っているあいだにも作業を継続するよう設計されている。「やること」リストのさまざまの作業を遂行し、必要に応じて分身代理人(補助代理人、sub-agent)をつくりながら仕事を片付けていく。分身代理人とは、特定の仕事だけを実行するために主軸の人工知能代理人から分枝した代理人だ。

それらの人工知能代理人が稼働するには多くのトークンを消費する。そのトークン費を会社が負担することで、工学者の職務遂行力と生産力が上がる。どれだけのトークンを使えるかは工学者にとって重要な要素だ。使えるトークンが多ければ、工学者にとっては働く環境としてすぐれていることを意味する。

▽工学者らのトークン使用量を番づけするメタやオープンAI

そういった多数の人工知能代理人が多用される結果として、会社らによるトークン使用量は激増中だ。半日で小論文を書く作業であれば、必要なトークンは1万個かもしれないが、大量の人工知能代理人群を動作させ続ける工学者は1日で数百万個のトークンを使うこともある。

トークンを大量に使う工学者が注目されるという傾向は、ニューヨーク・タイムスでも紹介された。メタやオープンAIといった人工知能大手らは、工学者のトークン使用量の順位を社内で発表して競わせるような環境をつくっている。そのため、トークンの予算が大きいことは、役職に付いてくる特典のようにあつかわれているという。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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