日本航空による羽田空港でのロボット試験運用にみる二つの問題 〜 連続稼働時間の制約と米連邦議会の安保懸念

日本航空は最近、東京国際空港(羽田空港)の地上業務に人型ロボットの配備を開始した。民間航空会社が地上業務にヒューマノイド・ロボットを複数年にわたって試験運用するのは世界初の事例だ。テック・タイムス誌によると、日航はしかし、導入したロボットの連続稼働可能時間と中国製という点において潜在的課題をかかえている。

▽ユニトゥリーの人型ロボット「G1」を試験

日本航空は、中国杭州拠点のロボティクス大手ユニトゥリー(Unitree Robotics)製の人型ロボット「G1」を中心とするロボット群を駐機場に配備した。それらのロボットは、貨物コンテナの移動や客室清掃業務の準備を担当している。

2028年まで続けられる予定のロボット試験運用は、GMOインターネットグループ傘下のGMO AI&ロボティクス商事(東京拠点)と共同で実施される。

航空機や作業員らと一緒に稼働することを想定したヒューマノイド・ロボット運用に関する空港側の安全基準を設けている国はまだない。

▽人手不足と空港利用者数の増加

日本航空と羽田空港の試みは、人手不足への対応が目的だ。経済協力開発機構(OECD)の2025年雇用見通しによると、日本の生産年齢人口は2023年から2060年に31%も減少すると試算される。羽田空港の年間旅客数は約8590万人に達し、世界でもっとも過密する空港の一つだ。

ロボットの試験運用を統括する日航子会社のジャル・グランドサービス(JGS)は、約4000人の地上勤務者を擁する。JGSの経営陣は、継続的な需要に即応できる速さで人員を増やせない、と認めている。

日本は、過去最多となる4270万人の訪日観光客を2025年に記録しており、2030年までに6000万人という目標に掲げている。

▽三次元ライダーとVLAによって自律稼働

駐機上に配備されたG1は、身長132センチメートル、重量35キログラムで、関節の自由度は23度から43度だ。標準的な航空機の出入り口を通過できる大きさだ。

G1には、三次元ライダー(LiDAR=Light Detection and Ranging=光検知&測距装置)と深度カメラが搭載されている。G1はそれによって自律移動する。また、VLA(Vision-Language-Action)によって稼働環境に応じて状況を理解しながら動く。

G1は、エヌビディア(NVIDIA)の物理的人工知能(physical AI)模擬化プラットフォーム「アイザック・シミュレイター(Isaac Simulator)」によって構築された模擬空港で訓練された。

▽電池連続稼働時間は約2時間

G1の運用には二つの制約がある。その一つは連続稼働時間だ。1回の充電による電池連続稼働時間は約2時間だ。したがって、飛行機の折り返し運行(turnaround)が長時間におよぶ場合には、G1の電池を交換するか、複数のG1を交代して調整しなければならない。

G1の最高歩行速度は時速7.2kmだ。その距離は、機体貨物室内での作業には十分だが、駐機上内を何度も往復するには足りない。

日航は取材に対し、「実行可能性を評価中」であり、本格運用前の試験ではなく、その実現性を評価するためのデータ集めが主目的だと説明している。

▽米国の政府と議会が注視

もう一つは、同件に関するワシントンDCの懸念だ。日航が中国製ロボットの試験運用を開始したことは、米政府や議会の一部で関心を集めている。現時点では、ワシントンDCが羽田空港での試験運用に影響している事実はない。

しかし、連邦議会下院の国土安全保障委員会サイバーセキュリティー&社会基盤保護小委員会は2026年3月に、中国製の人工知能やロボティクス、自律稼働技術の安全保障リスクを検証する公聴会を開催した。

議会下院が臨時に設置した対中政策特化の中国共産党特別委員会の全議員は、ユニトゥリーを国防総省の中国軍事会社リストと商務省の禁輸対象企業リスト(通称エンティティー・リスト)、連邦通信委員会(FCC)による使用禁止機器&サービス対象リストに追加するよう求める書簡に署名した。

5月中旬時点いおて、それらの指定はまだ実行されていないが、米下院議員らが取り引き禁止または使用禁止にするよう訴えている会社のロボットを使っていることは、潜在的問題に発展する可能性がある。試験導入場所が一工場であれば懸念されなかっただろうが、安保上重要な社会基盤である空港という事実が懸念材料だ。

▽映像データを中国に無断転送の疑い

米下院の中国共産党特別委員会が問題視しているのは、ユニトゥリーのロボットに内蔵された遠隔操作機能のソフトウェア「クラウドセイル(CloudSail)」だ。同委員会は、クラウドセイルが使用者の意図に関係なく監視し、その監視内容を中国共産党に転送することから、深刻なサイバーセキュリティー・リスクとして特定した。

独立系サイバーセキュリティー研究者らによる検証では、ユニトゥリーのブルートゥース通信機能が中国内サーバーに映像データを自動転送していたことが実証された。

ユニトゥリーは、利用者の承諾がなければ転送しないと反論している。ただ、動画会議サービス・プラットフォーム大手のズーム(Zoom)やティックトックをはじめ、すべての中国企業ら(中国人が米国で立ち上げた新興企業も含め)はこれまで、その種の問題を指摘された際につねに完全否定してきたが、それがうそであることがのちに例外なく発覚している。

また、中国には、すべての国民と会社に対し共産党の指示に従うことを義務づけた法律があるため、外国で事業展開する中国企業や外国で暮らす中国人らでさえも、自身の意思とは関係なく共産党の指示に従わなければならない。

▽大規模施設でのヒューマノイド運用データへの期待

しかし、日航側には動揺はみられない。協力会社のGMO AI&ロボティクスがユニトゥリーのロボットに搭載されているソフトウェアを修正して提供しているためだ。ただ、その修正内容の詳細とクラウドセイルの構造への影響については公表されていない。

日航と羽田の試験運用が成功すれば、物理的にもサイバー的にも高い安全性が求められる重要社会基盤における良質の運用データを集めることができると期待される。その種の実用データが大量に集められれば、その影響は一つの航空会社と空港を超える存在価値を持つとみられる。

BMWがサウス・キャロライナ州のスパータンバーグ工場にフィギュアAI(Figure AI)のヒューマノイド「フィギュア02(Figure 02)」を配備した事例では、11ヵ月間で約1250時間の運用を記録した。

BMWとフィギュアAIはそれによって、フィギュア02が大規模製造施設での作業負荷に対応できることを実証した。それらのデータは、今後の工場向けヒューマノイドの改良や進化にさらなる洞察をもたらすと期待される。

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