孫社長、厳しい障害に直面 〜 Tモバイル買収案で米当局から反対される恐れ

 米携帯電話サービス業界3位のスプリントによる同4位のTモバイルUS買収案は、両社が大筋で合意したことで大きく前進したものの、司法省の独占禁止法局と連邦通信委員会(FCC)による審査によって、買収交渉の停滞または買収案却下の危険性が強まっている。

 スプリントとTモバイルは先日、Tモバイルの1株に対し約40ドルをスプリントが払うことで暫定合意に達した。買収額は320ドル規模だが、Tモバイルの負債も含まれることから、買収総額は約500億ドルに達する。

 司法省独禁法局は、買収によって健全な市場競争原理が損なわれないかどうかを審査し、FCCは消費者の利益という観点から買収案を審査する。

 現在、米携帯電話サービス市場は、べライトンとAT&Tの2強からスプリントとTモバイルが引き離された格好で大手4社を形成し、低価格の地域サービスに特化する数社の中小キャリヤー(携帯電話サービス事業社)によって構成される。

 大手4社が全米市場の大部分を牛耳ることから、4社による競合と言えどもすでに寡占的状態にあるというのが独禁法局の見方であり、実際、独禁法局は、AT&TがTモバイルを買収することで2011年に合意成立した際にも、市場競争原理が損なわれるという理由でそれを否認した。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、独禁法局の元高官で現在は消費者擁護団体パブリック・ノーレッジの代表を務めるジーン・キメルマン氏は、スプリントによるTモバイル買収案について、当局の承認を得るには「かなり厳しい上り坂を登らなければならない」と話す。

 また、独禁法局のビル・ベア司法次官補は、現在の4大キャリヤー体制から3大体制になることで寡占化がさらに進み、市場競争原理が侵食されるため、スプリントとTモバイルの合併案を承認しがたいという考えを示した。

 一方、FCCのトム・ウィーラー委員長も、当局の理解を求めようとしたソフトバンクの孫正義社長に対し、厳しい姿勢を示している。

 ただ、FCCで同件について票決する5人の委員のうち、ジェシカ・ローゼンウォーセル氏は承認する姿勢に傾いており、そのほか二人の委員も柔軟な姿勢とみられることから、5人のうち3人の承認票を得る可能性も残っている。

 しかし、ウィーラー委員長には、審査手続きを引き延ばす権限があるため、同委員長の考えにそぐわない票決結果が出そうな場合には審査手続きを1年以上延期することで、最終的に却下するという結果に終わる筋書きも十分ある。

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