米国のデジタル広告市場が2021年に急成長した。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、新型コロナウイルス・パンデミックがその主因の一つであると同時に、リテイル・メディア・ネットワークの存在感と影響力の増大がその背景にある、と業界団体らが報告した。
▽消費のさらなるオンライン化
双方向広告協会(Interactive Advertising Bureau=IAB)とプライスウォーターハウスクーパース(PwC)の新しい報告書によると、オンライン・メディアやオンライン買い物にこれまで以上に多くの時間を費やす消費者を販促担当者らが追いかけた結果、米国のデジタル広告収入は2021年に35%増の1890億ドルに急増した。
その上昇幅は、新型コロナウイルス・パンデミック直後に一時的に足踏みした2020年の12%の成長率を大きく上回る数字だ。IABによると、2021年の前年比成長率は、デジタル広告市場が2006年に同じ上昇率を記録して以来最高だ。
▽新規事業の急増
2021年は、経済全般において新規事業が急増したことがデジタル広告の大幅成長に貢献した、とIABのデイヴィッド・コーエンCEOは話した。米国勢調査局のデータによると、2021年の新規事業申請件数は540万件と、前年の440万件を上回った。
「新しい消費者を見つけ、製品やサービスを提供するためにデジタル媒体の利用度が強まっている」とコーエン氏は話した。
ポッドキャストや動画逐次再生、インターネット・ラジオでのデジタル広告は、ほかのどの部門よりも速く成長し、58%増の49億ドルに達した。ただ、デジタル・オーディオ媒体はデジタル広告全体の2.6%にすぎない。
▽3大デジタル・プラットフォームが計64%を牛耳る
IABによると、2021年には、デジタル出版業者およびプラットフォーム10社が、デジタル広告収入全体の78.6%を占め、2020年の78.1%から拡大した(それら10社は特定されていない)。
調査会社インサイダー・インテリジェンス(Insider Intelligence)は、2021年の米デジタル広告予算の64%をグーグル(Google)とフェイスブック(Facebook)とアマゾン(Amazon)の3大デジタル・プラットフォームが占めた、と見積もっている。
▽リテイル・メディア・ネットワークのさらなる台頭
いまや経済の根幹をなす電子商取引は、今後もデジタル媒体への広告投資を促進するとみられる。その支出の一部は、いわゆるリテイル・メディア・ネットワークに流れる。ウォルマート(Walmart)やCVSヘルス(CVS Health)といった消費者向け小売大手らがそれにあたる。
それらの小売大手らは、独自の小売データを活用して消費者への訴求力を強める方法を広告主らに提供するようになっている。
リテイル・メディア・ネットワークとは、小売大手が所有する広告サービスで、販促担当者らが小売会社所有のデジタル媒体上のデジタル広告枠を買えるようにするデジタル広告網だ。それらの広告枠には、デジタル媒体を所有する小売大手らが自社の一次データを活用して広告主と消費者を結びつけるという利点がある。
▽ことし上半期に逆風も後半には安定か
ただ、今後の景気動向が不透明であるため、デジタル広告市場がどのように反応するのか不透明さが増している。
ロシアによるウクライナ侵攻という地政学的影響に加え、近年まれにみるインフレ、収束していない新型コロナウイルス・パンデミック、供給網混乱といった要因が2022年前半のデジタル広告市場に逆風となっている。
しかし、ことし下半期には安定する可能性がある、とRBCキャピタル・マーケッツ・エクイティーのマット・スワンソン分析家は述べた。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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