米国の補助金制度を理由に米国への生産拠点移転をねらうドイツ企業が急増 ~ 産業用電気代高騰や北米内互恵措置の適用に期待
気候変動対策技術の普及をうながすために米連邦議会が可決してジョー・バイデン政権が導入したインフレーション抑制法(Inflation Reduction Act=IRA)がドイツの会社らを米国に引き寄せている。ドイツ商工会議所(DIHK)が3月はじめに公表した調査結果で明らかになった。
ロイター通信によると、全業種にまたがる計2400社を対象に実施されたDIHK調査では、ドイツ企業の10社に1社が他国への生産拠点移転をすでに計画しており、その移転先として米国の人気が特に高まっていることがわかった。それによると、自動車製造会社やその供給会社の場合、23%がドイツ国外への生産移転を検討している。
IRAは、最終組み立てだけでなく主要構成品についても、北米で製造した電気自動車(EV)に税額控除の適用を認めている。
DIHKによると、機械工学業界の会社や化学、プラスチック分野の会社らも平均以上の数が生産拠点の移転を検討している。DIHKの別の調査ではさらに、米国に拠点を置くドイツ企業の17%が米国へのさらなる投資を検討していることも判明した。
アウディのマークス・デュースマンCEOは、「IRAによって米国でのEV工場建設がとても魅力的になった」と話し、テスラはIRAを理由に米国でのEV電池生産を優先し、ドイツのブランデンブルク拠点での生産計画を縮小している。
そのほか、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の気候&エネルギー専門家ステファン・ショーンバーガー氏は、「長期的には欧州の電気およびガス料金が米国の2倍以上になる可能性が高い」と指摘し、それが対米投資の増加要因となっていると話した。
ドイツのオラフ・ショルツ首相は最近、ホワイトハウスを訪問した際、IRAについて、EUをメキシコやカナダと同等の立場に置くよう働きかけたとみられる。近隣地域内互恵関係を重視する傾向が米国にあるためだ。それを反映するかのように、DIHK調査に回答した会社らの56%は貿易障壁に不満を抱いていた。同調査が2005年に始まって以来最高の数値だ。
DIHKのフォルカー・トライア貿易部長は、「明らかに保護主義の拡大という悲しい傾向がみられる」と指摘する。DIHKによると、調査対象企業の5分の1は、米国のIRAに含まれるような現地生産品規制によって差別されていると感じていることもわかった。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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