監視技術全盛の時代に容疑者特定に貢献したのは古典的な情報提供 〜 レディットへの投稿がブラウン大学銃撃事件の捜査を動かす

重大事件発生時にソーシャル・メディア利用者らが暴走するという副作用が社会悪として長年にわたって批判されているが、APによると、ブラウン大学で起きた先日の銃撃事件では、レディットへの投稿が容疑者特定に決定的に寄与したことで、ソーシャル・メディアが事件解決に役立つ場合もあるという見方が浮上している。

▽従来の否定的認識を覆す

12月13日午後4時ごろにブラウン大学(ロード・アイランド州プロヴィデンス)の工学棟の教室で起きた銃撃事件では、ソーシャル・メディアから得られる情報がそれほど役に立たないという従来の見方が覆された。

同事件では、学生二人が死亡し、9人が重軽傷を負った。最初の容疑者は、取り調べ後に無実と断定され釈放されたが、ソーシャル・メディア「レディット(Reddit)」に投稿された情報によって別の容疑者がすぐに特定された。

ただ、容疑者は18日、ニューハンプシャー州セーラムで死亡しているのが見つかった。捜査当局は、自殺と断定した。

▽さまざまの監視技術をすり抜けた容疑者

初動捜査では、人工知能を使った最新監視システムはほとんど役に立たなかった。容疑者は、大学での銃撃後に大学構内を離れ、周辺住宅地地域へと姿を消した。容疑者は、追跡困難の携帯電話を使い、医療用マスクで顔認識を回避し、車のナンバー・プレートを付け替えて捜査網を数日間にわたってすり抜けた。

捜査を大きく進展させたのは、レディットへの一つの投稿だった。「ジョン」と名乗るその投稿者は、フロリダ州ナンバーの日産セダンを探すよう投稿した。

▽銃撃発生の数時間前に犯人と遭遇

ジョンがそう判断した理由は、事件当日に容疑者と遭遇し、挙動不審だと思ったからだ。ジョンは、事件発生の数時間前に、ブラウン大学内の建物のトイレで容疑者に遭遇した際、12月のニューイングランドにしては異常に薄着だった点に不信感を覚えたと警察に説明した。

ジョンはあまりに変だと思って容疑者を追跡した。容疑者が駐車場でキーフォブを操作すると、グレイの日産セダンがそれに反応した。しかし、容疑者はそのまま周辺を一周したという。ジョンはその際、「あなたの車はあそこにあるのに、なぜブロックを回っているんだ?」と聞いたところ、口論になったという。

ジョンは、容疑者が車から離れたすきに車に近づき、それがフロリダ・ナンバーのグレイの日産セダンだと確認した。

▽投稿内容をもとに追跡を開始

ジョンは、それらの不審点から、「フロリダ・ナンバーのグレーの日産セダン、おそらくレンタル・カーを探すべき」とレディットに投稿した。ジョンは、FBIへ通報するようほかのレディット利用者から進言され、みずからFBIに通報した。

ジョンはまた、12月17日に路上で警察官に声をかけ、自分がレディットの投稿者であることを説明して捜査協力を申し出た。

地元警察は、市内各地の人工知能機械視認カメラ群の映像を解析し、ナンバー・プレートだけでなく車種や色、損傷、窓の汚れまで追跡した。その結果、被疑者死亡ながら容疑者の居場所をつきとめた。

▽MIT教授射殺事件と同一犯

また、数々の監視カメラ映像と目撃証言で特定された容疑者の車が、容疑者がのちに射殺したとみられるマサチューセッツ工科大学(MIT)教授の殺害現場付近でも目撃されたことから、それらの二つの事件が同一犯という可能性も浮上した。

捜査当局は、ブラウン大学での銃撃事件と、その二日後に起きたMIT教授殺害事件の容疑者としてブラウン大学の元大学院生クラウディオ・ネヴェス・ヴァレンテ容疑者(48)を追った。最大の手がかりとなったのは、フロリダ・ナンバーでグレイの日産セダンのレンタル・カーというジョンの投稿内容だ。

のちに車から押収された複数の証拠品はそれら二つの事件現場と完全に合致した。

▽ボストン・マラソン爆破事件とは対照的な現在のソーシャル・メディア

プロヴィデンス市のブレット・スマイリー市長は、FBI長官に宛てた書簡で「(ジョンは)英雄にほかならない」と称賛し、容疑者特定につながる情報に対する5万ドルの懸賞金全額を授与するよう進言した。また、レディットのプロヴィデンス掲示板では、見知らぬ人々からクリスマス夕食会への多数の招待状がジョンに届いた。

今回の捜査は、2013年のボストン・マラソン爆破事件後にレディットやほかのソーシャル・メディアにあふれた誤情報や無責任な憶測とは対照的だ。

もっとも悲惨かつ残酷だったのは、ある大学生が完全に無関係にもかかわらず、監視カメラ映像に写っている解像度の低い犯人に似ているという理由で、爆破犯あつかいされて誹謗中傷されたことで自殺したことだ。

▽投稿内容を監督するレディットの運営

重大事件発生直後には、ソーシャル・メディア利用者たちによる探偵ごっこや自警ごっこが繰り広げられる。アトランティック誌はボストン・マラソン爆破事件後に、「レディットよ、ボストン爆破事件での自警のまねごとをもうやめろ」という見出しでそういった行為を厳しく批判した。

また、ミシガン州立大学のライザ・ポッツ教授は、「ボストン・マラソン爆破事件ではソーシャル・メディアが完全に道を踏み外した。そのため『レディット探偵局』『レディット捜査局』と揶揄されるようになった」と当時を振り返る。

しかし、近年のレディット運営については、「比較的うまく機能している方だ」とポッツ教授は評価する。レディットのプロヴィデンス版では、主題ごとの投稿管理者たちが利用者たちによる過激な投稿や不適切な投稿、そのほかさまざまの誹謗中傷や暴走を抑える役割りを果たしている。

類似の管理運営はほかのソーシャル・メディアでもすでに一般化している。また、人工知能と人間の監督担当者らを併用した投稿内容管理も標準化されている。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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