アーカンソー、リチウム生産拠点を目指す

リチウム生産の中心地を目指すアーカンソー州は、中国との厳しい競争、低迷するリチウム価格、そして技術的課題という三重の壁に直面しているが、州政府関係者や業界幹部はこれらの障害が克服可能だと考えている。

◇リチウム埋蔵量500万トン超ロイターによると、ビル・クリントン元大統領の出身地でもある同州の地下には、フロリダからテキサスまで続く「スマックオーバー」(Smackover)と呼ばれる地層が広がっており、米地質調査所(USGS)は、リチウム濃度の高い塩水(ブライン)層に500万トン超のリチウムが含まれていると推定している。これは、電気自動車(EV)何百万台分の電池をはじめ、さまざまな製品を作れる量だ。しかし、ブラインからリチウムを抽出するには、まだ商業規模では実現されていない「直接リチウム抽出(DLE)」技術の確立が不可欠になる。また、リチウム価格が過去18カ月に80%以上も下落していることも同州にとっては逆風となっている。世界の電池サプライチェーンを追跡しているベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス(BMI)によれば、価格の低下は中国企業による供給過剰が主因だという。こうした逆境にもかかわらず、エクソンモービル(生産開始は少なくとも1年延期し2028年を予定)やスタンダード・リチウム、シェブロンなど複数の企業がアーカンソーでDLEの実用化に取り組んでいる。エクソンモービルのリチウム事業責任者パトリック・ハワース氏は同州リトルロックで10月開かれた「アーカンソー・リチウム・イノベーション・サミット」で「私たちはアーカンソー州を可能な限り競争力のある地域にするため努力している」と語った。

◇信頼できる長期的供給源に現在、米国内で稼働するリチウム鉱山は世界最大手アルベマール(Albemarle)がネバダ州で運営する鉱山ただ一つだが、アーカンソーは熟練労働力、全米でも低い電力料金、柔軟な規制制度を武器にリチウム生産の拠点となることを目指している。州内で石油会社エクイノール(ノルウェイ)と共同でDLEプロジェクトを進めるスタンダード・リチウム(カナダ)のアンディ・ロビンソン社長は「この好機が現実で、アーカンソーは真に有望な投資先であり、生産は低コストで信頼できる長期的な北米のリチウム供給源になり得ることを州外の人々に納得してもらうため、多くの時間を費やしている」と述べた。今年のサミットには前年より15%多い約860人が参加。トランプ第1次政権で大統領報道官を務めた後、22年にアーカンソー州知事に就任したサラ・サンダース知事は「DLEは必ず成功する」と自信を見せ、「大企業が何億ドルもの資金を投じるのは、前進の道筋が見えているからだ」と述べた。また、州内のリチウム産業は政府による最低価格保証を必要としていないとの考えを示した。サンダース氏はさらに、自身がEVを所有していないことについては、アーカンソーがロケット生産で有名なことを例に「私はロケットを持っていない。製品を所有していなくてもそれを生産・販売し、ビジネスが成功する環境を作ることはできる」と語った。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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