通信の「当たり前」を再定義する〜VISION USA CORP.

TOP INTERVIEW アメリカ市場に挑戦する日系企業のトップに聞く。

ポストコロナの市場変化とともに、通信サービスの在り方も大きく変貌してきた。グローバルWiFi事業を軸に成長を続けてきたVisionグループ。その米国拠点を率いるVISION USA CORP.社長の四条理氏に、事業の現在地と今後の戦略、そして米国市場での挑戦について聞いた。

三本柱で展開するグローバル事業

グローバルWiFi事業で有名なVision Inc.。グループ全体の事業は大きく3つの柱で構成されている。1つは創業事業である情報通信サービス。中小企業中心にITサービスや通信関連商材を提供し、日本国内で約40万社の顧客基盤を持つ。2つ目が主力であるグローバルWiFi事業。海外渡航者向けの通信サービスとして成長し、売上の過半を占める中核ビジネスとなっている。そして3つ目がツーリズムおよびグランピング事業。宿泊施設の運営やランドオペレーションを通じ、観光領域にも事業を拡張している。経営者層の顧客基盤と、旅行需要を持つユーザーの存在。この二つが掛け合わさることで、新たな事業機会が生まれたそうだ。コロナ禍を契機に今後の成長を担う重要な領域として位置づけられている。  

アメリカ市場で見えた想定外の需要

Visionグループは2018年に米国進出を試みたが、コロナ禍で一度撤退。その後、再挑戦して現在の体制を構築した。当初想定していたのは、海外渡航者向けの通信需要。しかし実際に市場を見てみると、異なるニーズが浮かび上がった。

「最も利用が多かったのは、実はアメリカ国内のユーザーだった」

旅行や出張だけでなく、引っ越し時の一時利用、入院中の通信確保、さらには車移動中の動画視聴など、生活に密着した用途が広がっていた。こうした実態を踏まえ、同社は米国内向けサービス「ループラス(LOOPLUS)」を展開。長期レンタル型で、データのシェアや繰越が可能な柔軟なプランを提供している。  

クラウドSIMが生む通信品質の差別化

Visionグループの強みはクラウドSIM技術にある。端末内に物理SIMを持たず、最適な通信キャリアへ自動接続する仕組みだ。これにより、地域ごとの電波状況に応じて最も安定した回線を利用できる。さらに、複数のSIMをクラウド上で切り替えることで、実質的な大容量・無制限通信を実現。従来のSIMカードでは難しかった柔軟な通信制御が可能となった。「どこにいても、必要なときに、安定した通信を使えること。それが私たちの価値」と四条氏は言う。単なるレンタルではなく、“通信インフラの最適化サービス”へと進化している点が特徴だ。

米国市場で直面した課題と突破口

一方で、米国市場は決して容易ではない。最大の課題は「認知ゼロからのスタート」。米国ではスマートフォンのテザリングや無料Wi-Fiが普及しているため、モバイルルーターの必要性自体が理解されていなかった。また、日本と異なり、紹介ベースの営業が機能しにくい点も壁となる。「新規顧客を獲得する機会そのものが少ない」そのため、展示会出展やパートナー開拓など、地道なリード獲得を積み重ねる戦略へシフト。航空会社や旅行会社、通信事業者との連携が鍵となっている。  

通信の未来は手段ではなく価値へ

今後の方向性について、四条氏は特定の技術に依存しない姿勢を強調する。Wi-Fi、eSIM、さらには衛星通信など、多様な手段を組み合わせながら、ユーザーに最適な通信環境を提供することが目的だ。「重要なのは“何でつなぐか”ではなく、“確実につながるか”」通信インフラの隙間を埋める存在として、キャリアでは対応しきれないニッチ領域での価値提供を目指している。

価値観のリセットが必要

日本的な「こうあるべき」という価値観が少ない分、自分らしく働ける多様性が前提となるアメリカ社会では、違いを受け入れる姿勢が自然と根付いていると気づいた。その環境を活かし、自らの殻を破ることが、米国で成功するための鍵だと四条氏は語る。

四条氏自身のリフレッシュ法はランニング。ただし単なる健康維持ではなく、「楽しみながら続ける仕組み」を取り入れている点が特徴だ。ニューヨーク・マンハッタンの街を走りながら、アプリで走行ルートを可視化し、未踏エリアを塗りつぶしていくヒートマップ走破が現在の楽しみだという。

日々の業務で蓄積されるストレスをリセットしながら、街の歴史や景観を体感できる時間でもある。走ることで“無心”になれることが、ビジネスにおける発想の切り替えにもつながっているという。  

PROFILE
VISION USA CORP.
四条 理
日本本社でグローバルWiFi事業を中心に事業推進・マーケティング領域に従事した後、2025年2月にニューヨークへ赴任。米国市場における通信事業の再構築を担い、現地法人の立ち上げと組織拡大を主導している。 「ゼロからの市場開拓」をテーマに、チャネル開拓やプロダクト設計の再構築を推進。現在はグローバルWiFi事業に加え、米国内向け通信サービス「ループラス」の展開にも注力し、通信の新たな価値創出に取り組んでいる。

LOOPLUS: https://getglobalwifi.com/looplus

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