海外教育Navi 第108回
〜日本の小学生の習い事事情〜〈後編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育アドバイザー等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。

Q.小学生の子どもを連れて帰国します。日本の小学生は塾や習い事で忙しいと聞きますが、その現状と帰国に際しての留意点を教えてください。

前回のコラムでは、帰国後の生活・学校の適応方法についてお話ししました(前回記事へ)。今回は、塾や習い事に対する姿勢についてお話しします。

「塾」や「習い事」についての考え方

では、帰国後の塾通いや習い事について、どのようなことに配慮すればよいのでしょうか。

はじめに述べたようにまずは「生活」を第一に考えていきますが、学校にも慣れてきたところで考える、いくつかのケースを挙げてみましょう。

日本の学習への遅れを取り戻したい場合

海外で現地校やインターナショナルスクールに通っていれば、日本の学齢相応の学習への遅れが気になるところです。焦らずご家庭でサポートしていただくのが望ましいと思いますが、子どもの年齢や家庭の事情等で難しい場合もあります。そのようなときは、子どもの状況に合わせて個別指導や少人数で指導をしてくれる補習塾を活用する方法があります。

特に日本の教育から長く離れていた子どもの指導は一般的な補習塾では対応できないこともあります。お子さんの状況を十分理解し、個別対応してくれるところを選択するとよいでしょう。

受験を前提としている場合

中学や高校の受験を考えている場合は、専門的な指導を行っている塾を活用しましょう。また、こちらについても「帰国枠」での受験を選ぶ場合は、一般的な中学や高校の受験とは試験の方法や科目、試験の時期などが異なってきますので、帰国枠での受験に対応している塾がよいと思います。

英語の保持をしたい場合

海外から帰国したお子さんが活用する塾として、英語の保持教室があります。いわゆる一般的な英語塾ではなく、海外で身につけた英語力を落とさないための帰国生を対象とした教室です。このような教室には二つの目的があります。

一つは英語の力を保持・伸長させること、もう一つは同じ「帰国生」といっしょに時間を過ごすことで慣れない日本での生活のなかでほっとする時間や空間を得るということです。

一つ目の目的はお子さんによっては負担になる場合もあるので注意しましょう。日常生活で英語を使わなければ、自然と英語の力は落ちてきます。それを高いレベルで維持するために英語を学ぶわけですが、子どもは通常の学校の学習もあります。そこでの宿題もあるでしょう。ある程度二つの学習を両立していかなければならない負担が発生するという点も理解しておきましょう。

せっかく身につけた英語を保持するということも大切ですが、学校での学習を第一に考え、お子さんの状況に合わせて考えていってください。

習い事をしたい場合

習い事というのはお子さんの得意なことや好きなことを増やしたい、伸ばしたいという思いで、小さいときから取り組ませる家庭が多いのが一般的です。それが生涯を通じての趣味になっていく人もいれば、将来の専門につながる人もいます。海外ですでに何か習い事をしていて、それを継続したいという場合は、生活が落ち着いたころに、お子さんと相談して続けられるところを探すとよいでしょう。

また、サッカーや野球などのスポーツのチームに入ることで、友達ができて、日本での生活の支えになるということもあります。そのような場としての活用はとてもよいことだと思います。

終わりに

帰国したお子さんの塾通いの実態として、あれもこれもということになってしまう傾向があります。

学習の遅れを取り戻すために補習塾に通う、英語を保持するために教室に通う、海外でやっていた習い事を継続してやる、このような感じで生活していくと、1週間のうち4日から5日、放課後や週末の時間が取られてしまいます。結果として疲れてしまい、学校で居眠りをしたり、体調が悪くなったりという状況が起きてしまうのです。はじめにもお伝えしたように、何よりもまず安心して生活できるようにゆったりとした時間を過ごすことが大切です。ぜひ、そのことを忘れずに帰国後の生活を考えていただきたいと思います。

今回の相談員
海外子女教育振興財団 教育アドバイザー  
中村昌子

1984年から帰国生だけの特設学級(国際学級)を併設する東京学芸大学附属大泉小学校に35年間勤務する。その間、国際学級主任、担任を経験し、帰国生への相談・面接等も担当する。2012年より同校主幹教諭。退職後19年より、同校非常勤講師、東京学芸大学非常勤講師を務める。20年10月より海外子女教育振興財団の教育相談員。
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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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