海外教育Navi 第50回
〜子どもの性格に合った学校の選び方〜〈後編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。


Q.海外に行ったとき、また日本に帰国したとき、子どもの性格に合った学校を選ぶコツを教えてください。

前回のコラムでは、子どもの性格と学校の性質についてご紹介しました(前回記事へ)。今回は、学校の情報の集め方についてお話しします。

学校情報をどのように集めるか

次に、学校情報の集め方についてですが、紙面、ネット、口コミ等を利用する方法があります。

海外の学校をお探しならば、在外教育施設(日本人学校、補習授業校等)に関する弊財団の情報はお勧めです。一部の現地校やインターナショナルスクール等の情報もあります。弊財団の東京本部や関西分室では国・地域別のファイルを自由に閲覧できます。

毎月開催している海外赴任者向けのセミナーでは、赴任される国・地域の学校情報の冊子を参加者に無料でお渡ししています。さらに弊財団の維持会員になっている企業・団体に所属されているかたなら、その情報をネットでもご覧になることが可能です。

ネット情報としては、 “Great Schools” や “School Digger” などアメリカの学校検索サイト、またイギリスでは “Ofsted” のような学校評価のサイトもあります。赴任先によっては、こういったサイトから現地の学校情報を集めてもいいでしょう。

口コミなら、会社等の前任者や現地在住の人からの情報は、より正確でしょう。アメリカでは不動産業者が生活にかかわるさまざまな情報をつかんでいますので、家探しの際に学校について聞かれてもいいかと思います。

海外から帰国される際に日本の学校を探されるのなら、弊財団が毎年刊行している『帰国子女のための学校便覧』をご活用ください。帰国児童生徒を受け入れている全国の小・中・高・大・短大・インターナショナルスクールや各都道府県教育委員会の情報等が掲載されています。また、弊財団のホームページをご覧いただければ受け入れ校を検索できますし、そこから各校のホームページを見ることもできます。

さらに毎年7月下旬から8月上旬にかけて、東京・名古屋・大阪にて国内学校説明会を開催しています。多くの帰国児童生徒受け入れ校が参加していて、一度に多くの学校情報を得ることができます。弊財団の個別相談もご利用ください。海外や国内の学校情報についてもお伝えいたします。

海外から帰国したからといってかならずしも受け入れ校が適しているとは限りません。公立の学校なら各都道府県教育委員会のウェブサイト、私立学校なら日本私学教育研究所のウェブサイトなどからも学校情報を集めてください。さらに、予備校等が出している学校情報も参考になるかと思います。

学校情報のなかで、何を大切にするか

学校の検索ができたら、そこで何を見るかということです。見るポイントとしては次のような点が挙げられます。

・校風
・指導内容
・進路実績
・学校形態(中高一貫校か、男子校・女子校・男女共学校か、大学附属校か、宗教系か、どのような学科やコースがあるか等)
・学校行事
・課外活動の様子
・施設
・通学時間 等

子どもの性格から見るのであれば、いちばんに気になるのは校風でしょうか。「自由な雰囲気で子どもの自主性を重んじる学校」、「細かな校則があり生徒指導が厳しい学校」等、さまざまな校風があります。

指導内容、進路実績、学校形態、学校行事、課外活動の様子はどうでしょうか。たとえば、「進路実績があり受験指導に力を入れている学校」「学習課題が多く課外活動はあまり活発でない学校」「宗教系の学校」など、お子さんの性格から見ていかがでしょうか。

学校の施設も大切なポイントです。私は学校訪問の際にかならず見せてもらうところがあります。それは図書室です。図書室の雰囲気や蔵書数、蔵書の内容や掲示の仕方などから、学校が子どもたちにどのような力をつけようとしているのか、その一端をうかがうことができます。

また、仮にお子さんにぴったり合った学校だったとして、通学にかなりの時間がかかるとすればどうでしょう。毎日の登下校に何時間も要するのなら、お子さんの体だけでなく精神面への負担も心配です。通学時間も学校選択にとって大きな要素となります。

最終的にどのように学校を決めるか

お子さんの性格をしっかり見極め、どのように育てたいかという家庭の教育方針がはっきりしたら、実際に気になる学校を訪問してみましょう。学校説明会やオープンスクール、それに文化祭や運動会も学校の様子を知るよい機会です。
そういった学校行事に参加できない場合は、直接、学校に見学させていただくお願いをしてみてください。できれば平日の、子どもたちが登校しているときがお勧めです。実際その学校に通うことを想定して、お子さんといっしょに家から交通機関を使って行ってみてください。学校までの登下校路や周辺の様子も観察しておかれたらいいでしょう。登下校中の児童生徒の様子を見ることができれば、その学校の子どもたちの実態がよくわかります。

学校では、先生がたから直接話を聞き、いろんな施設を見てきてください。授業の様子も見ることができれば、なおいいでしょう。それぞれの学校の文化がわかり、目や耳、肌を通して感じるものがあるはずです。その感覚がとても大切です。お子さんが気に入ったとしたら、きっとその学校にはお子さんを引きつける何か大きな魅力があるに違いありません。

最後に

学校がお子さんの性格に合うか合わないかは大切な問題です。しかし、いったん選んだ学校に入ったら、どれだけ一生懸命にがんばるか、どういう姿勢で学校生活に臨むかということがとても重要になってきます。

お子さんが順風満帆に楽しく有意義な学校生活を送るに越したことはありません。ただ、逆風が吹くこともあるでしょう。それを乗り越えていくたくましさも必要です。逆風を乗り越えたお子さんは、またひと回り大きく成長します。親御さんには、そういったお子さんを見守り、支えてあげることが大切だと考えます。

今回の相談員
海外子女教育振興財団教育相談員
菅原 光章

1979年から奈良県の公立小学校に勤務する。1983年より3年間、台北日本人学校へ赴任。帰国後は奈良市立小学校に勤務、教頭・校長を歴任する。また奈良県国際理解教育研究会の会長を務めた。退職後、奈良県教育振興会理事ならびに同志社国際学院初等部の教育サポーターを務める。2016年4月より海外子女教育振興財団の教育相談員。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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