ニューヨーク拠点の新興企業ボタン(Button)の社是を謳うポスターには、「オモテナシの提供(Provide omotenashi)」と書かれてある。
「もっとも簡単な文字通りの翻訳は、客人が求めるものが何かを察して、先に提供すること」とボタンのマイク・ヤコーニ最高経営責任者(CEO)は「オモテナシ」の意味について説明する。
ただ、ボタンは、接客業界の新興企業ではない。
ビジネス・インサイダー誌によると、ボタンは、アプリケーション群のあいだの機能連携を可能にかつ強化することで、モバイル端末利用者の利便性を高める技術を企業向けに提供する。
たとえば、スマートフォンでフォースクエアー(Foursquare)を使って、行きたいレストランを見つけた場合、ボタンの技術を使うことで、オープンテーブル(OpenTable)から直接予約できたり、ウーバー(Uber)で車を呼び、同社の技術によってすでに入力されているそのレストランの住所に向かったりすることが可能となる。
日本の哲学である「オモテナシ」は、ボタンの事業理念と企業文化の中核をなす、とヤコーニ氏は説明する。総勢25人のボタンは、ビジネス誌のクレインズ(Crain’s)によって、ニューヨークでもっとも働きたい職場の首位に選ばれたばかりだ。
モバイル端末利用者の端末利用行動に応じて、次に求められるであろう機能を可能にするというのが、「オモテナシ」の心を反映した同社のビジネス・モデルだ。
同社は社員に対しても「オモテナシ」を提供している。たとえば、社員には、17週間の有給育児休暇を与えられ、仕事のためのオンデマンド・サービスを試したい場合は、上司の許可を得ることなく100ドルまで使うことが許されている。また、社員らが専門性を身につけるための活動に奨学金を出している。
通常であれば、零細の新興企業ではどれも実施されない手厚い福利厚生で、「もっとも働きたい職場」の首位に選ばれた理由もそこにある。昼食やコーヒーが無料で提供されることは言うまでもない。
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