消費財大手が新興企業に注目

 ベンチャー・キャピタリストは一般に、消費財関連の新興企業に関心を示さない。その一方で、最近、消費財業界の大手企業が新興企業に注目し始めている。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、消費財メーカー大手プロクター&ギャンブル(P&G)とゼネラル・ミルズ(General Mills)は、クラウドファンディング(crowdfunding)のサークルアップ・ネットワーク(CircleUp Network)から消費財に関する起業家や新興企業の詳細情報を入手するという提携を結んだ。

 サークルアップは、消費財関連の起業家や新興企業と個人投資家をウェブサイトで結ぶ投資機会提供サービスを提供する新興企業。資金を調達したい起業家や新興企業が事業案をサークルアップに提出し、サークルアップがその内容を精査して、選び抜いたものをウェブサイトで公開し、小口の個人投資家がそれらのなかから投資したい事業案に資金を投じるという仕組みだ。

 サークルアップは今回の提携を受けて、ペット・フードや飲料水、スナック、乳幼児製品といった日用消費財の分野を18に分類し、それぞれの分野の起業家や新興企業に関する動向や傾向、どの分野で資金調達が最も活発か、どの新興企業がサークルアップの投資家たちから信頼を得ているのかといった情報を四半期ごとにP&Gとゼネラル・ミルズに報告する。

 P&Gはそれらの情報をもとに、注目すべき新興企業を特定し、事業指導やライセンス契約の設定、合弁事業の機会を模索して投資する。同社の広報担当者によると、場合によっては、新興企業やその企業が持つ技術を買収することも視野に入れている。

 一方、ゼネラル・ミルズは、サークルアップとの提携内容について談話発表を拒否している。

 サークルアップの共同設立者ロリー・イーキン氏によると、サークルアップは、両社との契約のように業界大手との提携を積極的に進めている。従来のベンチャー・キャピタルから注目されない有望な起業家や新興企業に資金調達機会をできる限り提供したいとイーキン氏は話す。

 ただ、同社のサイトに事業案を提出している起業家や新興企業の一部からは、自社の商品開発案や事業内容をそれらの大企業に公開することに懸念する声も上がっている。

 P&Gやゼネラル・ミルズに報告される情報内容には、顧客リストや支出、預金高といった社外秘情報が含まれることに加えて、それらの大手が起業家や新興企業の事業案や商品案をもとに自社開発する可能性を恐れるためだ。

 栄養価の高いスナックを開発するズム・スーパーフーズ(Rythm Superfoods)のスコット・ジェンセン最高経営責任者(CEO)は、「同業者に我々の行動が筒抜けになってしまう」と、情報公開に対し懸念を示す。

 それに対してサークルアップのライアン・キャルドベックCEOは、同サイトを使用する際に厳密な規定を設け、一般的な投資家は基本情報のみ閲覧でき、サークルアップが保証した投資家だけが詳細情報を閲覧できるため、情報内容の転用や盗用の心配はないと説明している。

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