連邦政府機関の一部閉鎖によって、物流を監督する官庁が業務や勤務時間を縮小している。荷主や貨物業者は「これ以上閉鎖が続けばサプライチェーン全体に遅れが広がる可能性がある」と懸念している。
■追加承認必要だとリスク大
ウォールストリート・ジャーナルによると、物流業界ではすでに、輸出業者に対する輸出許可の承認が遅れる▽航空貨物を検査する職員がいない▽関税の払い戻しが処理されない…といった問題が起きており、ワシントンDCを拠点とする貨物運送協会(AfA)の幹部ブランドン・フライド氏は「解決されない問題が増えていけば膨大な量になる」と警告している。
今のところ国境を越える貨物輸送の遅滞は比較的散発的で、運輸保安局(TSA)の人手不足によって旅客の安全検査で起きているような遅れはない。米国の主要玄関口に拠点を持つバーモント州の通関業者A・N・デリンガーのマイク・レイハー企業法令順守責任者は「ほとんどの問題は何本かの電話やeメールで解決できるが、他に多くの仕事を抱えていない対応可能な人を見つけるのが難しい。追加審査が必要な貨物は遅れる可能性が高く、その一部はかなり遅れる可能性がある」と見ている。
国境を越える貨物を審査する税関国境警備局(CBP)は、本部や支部の職員が一時帰休状態で給料が支払われていないものの、税関自体は開いている。環境保護局(EPA)などの連邦機関の追加承認が必要な輸入品は、処理にかかる時間が長引いており、例外や技術的な質問が積み重なれば遅れは拡大する可能性がある。
■新関税とのダブルパンチ
バッグ類製造・販売のシグナル・ブランズ(Signal Brands)のアリー・サッソン氏によると、小売業者は新しい関税適用を回避するため注文を早めていたため、すでに2018年後半から輸入拠点や貨物ネットワークでは取扱量が急増し、負担が増えていた。「港では深刻な遅れが発生しており、その問題は多方面に影響している。正直言って問題のどれだけが政府閉鎖によるものかは分からない」。
AfAのフライド氏によると、航空貨物の輸送では、事前スクリーニングによって一部の空港で発生している乗客サービスの遅れのような事態はあまり起きていないという。多くの航空貨物は、空港に着く前に正規の民間業者が運営する検査所で検査されており、今は旅客機で輸送される貨物のほぼ半分が事前スクリーニングされているため、この効果が大きいという。ただし、貨物に関して不審が生じた場合に対応するTSA職員がおらず、それに他の政府機関の縮小や閉鎖が加わって供給チェーンの動きが影響を受け始めているという。(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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