欧州サプライヤー、防衛分野に軸足移す企業も

欧州の自動車部品会社は、自動車生産の長期低迷で売り上げや利益率が圧迫される中、防衛分野へのシフトを加速させている。

◇厳しい経営と防衛費拡大

オートモーティブ・ニュースによると、すでに一部のサプライヤーは、軍事・防衛関連事業を拡大する計画を発表した。独シェフラーは昨年12月、独新興ドローン企業ヘルシング(Helsing)と戦略的パートナーシップを締結。ヘルシングのドローン向けに主要な電子部品を製造する予定で、防衛市場でのポジション強化を狙っている。

車体や電池、部品製造で使うレーザーシステムを供給する独トルンプは、エレクトロニクス大手ローデ・シュワルツと提携し、小型の飛行体を数秒以内に無力化できる対ドローンシステムを開発する。このシステムは防衛用途のみに使われる。

こうした動きの背景には、欧州サプライヤー業界の財務が依然として厳しいという状況がある。デロイトのサプライヤー・リスクモニターによれば、パンデミック、戦争、経済低迷、政治的分断などから混乱が6年続く中、サプライヤーのほぼ5社に1社が不安定な財務状況にある。一方、防衛支出は急拡大しており、マッキンゼーは欧州のNATO加盟国による軍事装備費について、2025年の1700億ユーロから30年にはほぼ倍増の約3350億ユーロに達すると予測している。

◇高級車から戦車へ

フィンランドの完成車受託生産ヴァルメト・オートモーティブ(ValmetAutomotive)は、同国の防衛企業パトリア(Patria)と提携し、かつてサーブ、ポルシェ、メルセデス・ベンツの車両を組み立てていた工場で装甲車両の生産する計画で、年内の開始を見込んでいる。

自動車メーカーが余剰生産能力を抱え、生産を自社工場に戻す動きが進む中で、ヴァルメットにとって防衛分野への転換は極めて重要になっている。年産能力10万台の同社工場では、ポルシェの「718ケイマン」と「718ボクスター」、メルセデス「Aクラス」の生産が終了した後、乗用車ではメルセデス「AMG GT」4ドアしか生産していない。同社は乗用車分野の事業も維持する方針だが、複数の新興企業との提携に失敗し、中国自動車メーカーとの契約もないため、製品ラインに空白が生じている。

同社は、特殊トラックのシス・オート(Sisu Auto、フィンランド)とも軍用車両および部品分野で協業する予定で、年間最大300台の生産と約300人の雇用創出を見込んでいる。

◇ボッシュ、ZFは慎重姿勢

マッキンゼーの航空宇宙・防衛分野専門家によれば、防衛と自動車の製造は製品や生産工程が本質的に方向が同じで、多角化は理にかなっているが、自動車産業の低迷を防衛分野だけで補うことはできない。このため慎重な姿勢を見せるサプライヤーもあり、ボッシュのシュテファン・ハルトゥングCEOは「防衛は戦略的な重点分野ではない」と話す。またZFは、既に防衛関連のトランスミッション事業を持っているが売り上げに占める割合は1%未満で、マティアス・ミードライヒCEOは「興味深い領域だが、自動車事業の規模に到達することは決してない」と言い切る。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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