米電話サービス業界、再編時代に突入か 〜注目すべきM&A候補5件の動き

 米通信サービス事業者(キャリヤー)の間で企業合併&買収(M&A)が活発化している。同業界4位のTモバイルUSAと同5位のメトロPCSコミュニケーションズ(PCS)の合併が成立しようとするなか、同業界では今後も合併&買収劇が展開される可能性がある。インベスターズ・ビジネス・デイリーでは、業界再編をもたらす主なM&Aとして五つの筋書きを指摘した。

 1)ディッシュのもう一つの狙い

 マコーリー・キャピタル(Macquarie Capital)によると、衛星テレビ放送サービス大手のディッシュ・ネットワーク(Dish Network)が、メトロPCSを吸収したあとのTモバイルを買収標的にする可能性がある。

 そのためには、ディッシュがソフトウバンクに対抗して提示した米スプリント・ネクステルの買収案がご破算になった場合の話であることは言うまでもない。

 一方、スプリントについては、Tモバイルとの合併話の憶測や観測がこれまでに飛び交っていた。

 しかし、多くの業界専門家は、司法省が無線通信帯域に関する取引についてFCC(連邦通信委員会)に協力して周波帯域競売審査に加わる旨を4月に発表したことから、両社の合併が承認される可能性が低いとみている。

 司法省が審査に加わったのは、より小規模のキャリヤーに帯域を公平に分配することが目的だ。

 2)グーグルの参戦も

 そこに登場したのが、日本のソフトバンクだ。201億ドルでスプリント株の70%を買収する案を提示し、スプリントの取締役会はそれに合意している。

 ところが、ディッシュが先日、255億ドルという提示額でソフトバンク案に対抗したことから、スプリントの大口株主の一部には、ディッシュによる買収を支持する動きも出始めた。

 ただ、ディッシュに案には、スプリントを買収した後に抱える莫大な債務という深刻な課題がある。それでもスプリント側は、特別委員会を設置してディッシュ案を検討している。

 かたや日本の銀行は、ソフトバンクによる買収案に追加投資する準備を進めている。その点で、ディッシュの資金的課題を問題視する声もあるが、ディッシュではそれに対し、共同買収に参加する提携先を探し出すことも視野に入れているという指摘もある。

 一部の報道によると、その提携先として浮上しているのはグーグル(Google)だ。それについては、詳細どころかすべて不明で、憶測または観測の域を出ていない。

 3)スプリントとクリアワイヤーとクレスト・ファイナンシャル

 過中にあるスプリントも、同社が最大株主である高速無線通信サービスのクリアワイヤーの残り株すべてを買収して完全子会社化しようと交渉を進めている。しかし、クリアワイヤーの取締役会と株主が、スプリントの提示額に難色を示しているため、交渉が難航している。

 クリアワイヤーの50%を保有するスプリントに対抗しているのは、投資会社のクレスト・ファイナンシャルだ。

 5月21日に予定されている投票でスプリントが勝つには、75%の票を集める必要がある。ジェフリーズのトーマス・サイツ氏によると、クレストが争奪戦に勝利した場合、スプリントがクリアワイヤーから完全に手を引く可能性がある。

 4)ベライゾンとボーダフォン

 一方、ベライゾン・コミュニケーションズ(Verizon Communciations)は、ボーダフォンとの合弁事業であるベライゾン・ワイヤレスを完全子会社化するために、ボーダフォンの持ち分45%を買い取る準備を進めている。

 ベライゾン・コミュニケーションズは、その45%を買収するために1000億ドルをボーダフォンに提示したとみられる。

 それに対しボーダフォンは1350億ドルを要求していることから、双方の提示額に大きな隔たりがあり、交渉が前進していない。

 一部の業界専門家は、ベライゾンが買収額を1200億ドルに引き上げれば、合意が成立すると予想する。

 5)欧州かインドへの進出を視野に入れるAT&T

 米携帯電話サービス市場でベライゾンとの2強に位置するAT&Tは、今のところ、他社ほどの大きな動きを見せていない。

 AT&Tに対する規制当局の風当たりが強いことから、AT&Tとしては、軽率な行動に出れないという事情がある。

 同社は2011年にTモバイル買収を試みたが、独禁法に抵触すると判断されて、規制当局によってつぶされた。

 業界専門家の一部は、米国内でのキャリヤー買収が困難なことからAT&Tが欧州での買収に動くと予想する。そのほかにも、急成長中のインド市場を取り込むべく、インドで企業買収に出る可能性を指摘する見方もある。

 さらに、ディッシュの動き次第では、AT&Tがディッシュの周波帯域免許を買い取る可能性もあるとみられる。

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