米国からの自動車輸出が拡大〜米工場の国際競争力上昇で

 米国内の自動車工場が、4年前の経営再建による人件費の削減や赤字工場の閉鎖で国際的な競争力を高めており、メーカーは米国から海外に向けた輸出を拡大している。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、商務省国際貿易局(ITA)のまとめでは、2012年に米工場で生産され輸出された車は100万台超と過去最高を記録し、03年から3倍に増加した。今のところ、米国への輸入の方が輸出より多く、12年の米自動車貿易赤字は1055ドルで、輸出は輸出(510億ドル)の2倍に上っているが、米貿易赤字全体に占める割合は、1987年の22%から14.5%に縮小している。

 国内には自動車工場が全社合わせて44カ所あり、そのうち大型工場3〜4カ所分の生産量が海外に出荷されている。主な輸出先は、世界最大の自動車市場である中国のほか、サウジアラビア、韓国など。近年は特に、かつて日本製自動車の最大輸入業者だったホンダが輸出を促進しており、米工場の拡張やドル安を強みに、14年末までには北米輸出量を日本からの輸入量以上に増やし、12年の9万台から最終的には20万台以上に引き上げる意向だ。

 GMやフォードは、早くから外国に進出し欧州などに工場を持っていたため、これまでは米国から輸出する必要をあまり感じていなかったが、赤字工場の閉鎖につながった4年前のGM、クライスラーの経営破綻とドル安の間接的結果として、米国製自動車の輸出が増えている。破綻した2社は経営再建によって多くの労働者を熟練労働者のほぼ半額(時給14ドル)で雇えるようになり、政府支援を受けずに再建を果たしたフォードも、ほぼ同じ条件を労組から取り付けた。

 こうして無駄を削ぎ落とした米業界は、11年は労働者の給与・諸手当コストが1時間当たり平均38ドルと、ドイツの60ドルよりはるかに少なくなった。日本は37ドルだが、07年以降の上昇額は米国がわずか3ドルなのに対し、ドイツは14ドル、日本は12ドルとなっている。このため、ドイツや日本の自動車メーカーは米工場からの輸出に力を入れており、BMWは12年にサウスカロライナで生産した30万15125台のうち約70%を、メルセデスベンツもアラバマ工場で生産した18万台のうち約70%を輸出、トヨタの米国からの輸出も前年の8万6000台から12万4000台に増えている。

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