米国のメタン排出量、予想上回る〜実測値の分析結果

 米国で2000年代半ばに人間の活動によって排出されたメタンの量は、環境保護局(EPA)や欧州機関の従来の推定より約1.5倍多いと結論づける調査報告書が、米科学アカデミー紀要最新号に掲載された。

 ニューヨーク・タイムズによると、ハーバード大学の科学者ら15人が07年と08年、全米の山頂などにある通信塔や航空機を使って収集した大気の標本約1万2700件を基に、メタン濃度の測定と分析を行った。

 その結果、当時から石油やガス生産に対する懸念が浮上していたテキサス州やオクラホマ州では、メタン排出量の実測値が推定値の2.7倍に上った。また、これらにカンザスを加えた3州は、石油やガスに関連した人間の活動によるメタン排出量が推定値の5倍に達し、国内のあらゆる人為的メタン排出量の4分の1を占めた可能性がある。

 一方、アパラチア山脈の炭鉱地帯、イリノイ州南部、ケンタッキー西部、ニューヨーク市などは推定値より排出量が少なかった。ただしこれらの地区の大気標本は比較的少ない。

 さらに、家畜が排出するメタンは欧州の推定の約2倍に上った。

 EPAは、人為的要因と自然要因を合わせた国内のメタン総排出量は、1990年代半ば以降ゆっくりとではあるか確実に減少しているとみている。13年4月には、天然ガスの生産や輸送、ごみ埋立場、炭鉱からの排出量が大幅に減ったことなどを理由に1990〜2010年の排出量推定値を8〜12%下方修正した。

 今回の実測調査は、排出量が減少しているという当局の推論に疑問を投げかけており、特に石油やガスの生産および家畜という2大排出源からのメタンに関しては、EPAによる07と08年の推定値よりはるかに多いとみている。

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