がん治療のバイオシミラー販売へ〜FDA諮問委、承認を勧告

 食品医薬品局(FDA)の諮問委員会は8日までに、スイスの製薬大手ノバルティスのジェネリック(後発医薬品)部門サンドが申請しているバイオ抗がん剤の安い後発品「EP2600」について、医薬品として承認するよう勧告することを全会一致で決めた。

 ニューヨーク・タイムズによると、 FDAは諮問委の勧告に従うのが通例で、EP2600が承認されれば、生物製剤を模倣した「バイオシミラー」と呼ばれる後発品が米国で初めて販売されることになる。

 EP2006は、白血球の生成を助ける米アムジェンの「ニューポジェン(Neupogen)」(一般名はフィルグラスチム)の生物学的コピー薬。欧州では09年に「ザルジオ(Zarzio)」として認可されたが、米国ではバイオシミラー販売のための法整備が遅れていた。

 生物製剤は通常の医薬品のような化合物の調合品ではなく、生きた細胞から作られる。よく知られた生物製剤には「レミケイド(Remicade)」「ヒュミラ(Humira)」「エンブレル(Enbrel)」などの免疫疾患薬や、「ハーセプティン(Herceptin)」「リトキサン(Rituxan)」「アバスティン(Avastin)」といった抗がん剤などがあるが、非常に高価な物も多く、アバスティンは年間5万ドル以上かかる。

 生物製剤の開発が始まった1980年代は「製造工程が非常に複雑なためジェネリック生産はほぼ不可能」と言われたが、科学の進歩やブランド薬の特許切れなどを受け、バイオシミラーの開発が始まった。サンフォード・C・バーンスタインのシニアアナリストは「米国の医療をより手頃な値段にするには、バイオ薬分野に低価格の競合品を入れることが不可欠」と見ている。

 米最大の医薬品処方管理会社エクスプレス・スクリプツ(Express Scripts、ミズーリ州)によると、バイオシミラーはブランド薬より約3分の1安く、EP2006が承認されれば今後10年間に薬代を57億ドル節約でき、現在開発中の11件のバイオシミラーが承認されれば2500億ドル節約できる可能性がある。

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