高品質、高機能、環境対応型のコンセプト提示 キャッチは“You’ll be Back”

New Business Close Up
アメリカで新たな事業を手がける人物をクローズアップするインタビューシリーズ。
北米地区ですでに40のホテルを経営するAPAグループ代表、元谷外志雄氏に聞く。

アパグループ代表、元谷外志雄氏現地時間9月6日に株式取得完了の記者発表が行われたCoast Coal Harbour Hotel(カナダ国ブリティッシュコロンビア州バンクーバー市)にて 本年11月15日にグランドオープンを予定https://www.apa.co.jp/newsrelease/6888

アパグループ代表、元谷外志雄氏
現地時間9月6日に株式取得完了の記者発表が行われた
Coast Coal Harbour Hotel(カナダ国ブリティッシュコロンビア州バンクーバー市)にて
本年11月15日にグランドオープンを予定
https://www.apa.co.jp/newsrelease/6888

前倒しで米国進出した経緯は?

日本にて一番のホテルチェーンに認識されるまでになったら、いずれ海外進出しようということは以前より考えておりました。本来は2017年頃を予定していたのですが、昨年の11月決算で経常利益280億円、売上高利益率30%超を達成することができ、また1984年12月に会社のスタートとともに始めた会員システムが、今では会員数が1,100万人と、他のホテルの会員制度と比べて一桁違う規模となり、利益率・会員数において日本で一番という所まで来ましたので、そろそろ海外進出を考えていた際にアメリカのホテルの話を頂きました。

当初よりフランチャイズでの世界展開を考えておりました折に、 ニュージャージーの元ヒルトンホテルについての話があり、早速見学に行きました。ニューヨークではマンハッタンにあるホテルの価格が高騰しているため、最近のビジネスマンは郊外に泊まることが多いようです。隣接するニューアーク空港から当ホテルに泊まって、電車を使えばすぐにマンハッタンまで行くことができるということで、これはいけるなと考え、提携することにしました。結果として2年ほど早く海外戦略をスタートすることになりました。

今回のカナダ案件は、日本の上場企業がオーナーであるバンクーバーのホテルチェーンの売却ということで、日本人には非常に馴染み深く、日本からの飛行時間が短いということも勘案して即決しました。当時急速に円高が進み、ドル建てベースでは101円台にまでになり、また現在日本の金利が低いので、海外投資のチャンスだと思いました。

日本のホテルの海外展開は、アジアの周辺諸国が多いです。北米に進出することにより高い収益率を多少損なうものであっても、世界的なブランド力・知名度がアップし、日本におけるホテルの収益力がアップするのであれば、トータルでは収益力の向上になるのではないかと思います。

他のホテルにない
APAの特徴とは?

我々は高品質・高機能・環境対応型の新都市型ホテルのコンセプトを提示しようと考えています。また、ゲストとスタッフは対等であるというスタンダードを確立するつもりです。現在もゲストに良く仕えるホテルは良いホテルであるという観念が残っておりますが、いずれ世界のホテルは新都市型スタイルのホテルに収斂するだろうと考えています。

ホテルではチェックイン時や、用がある際に従業員が部屋に入ることが当たり前に行われていますが、実際ホテルを使うユーザーとしての立場を考えた時、過剰なサービスにかかる人件費がホテル代に入っていると考えると嬉しくはないです。また、ホテルの部屋のスペースの広さを格付けとする風潮がありますが、シングルルームに一人で泊まった時のことを考えれば、殆どのビジネスマンのお客様は、部屋に入ってかばんを置いて外へ出かけて商談をして食事をして、帰ってお風呂に入ってテレビを見て寝て、朝食が美味しければよいわけであって、そんな広い部屋を求めているわけではないのです。広さではなく、満足を売るホテルにしようと、そういう考え方を世界ではじめて我々が言い出したのですが、我々のシングルルームは非常にコンパクトにできており、部屋を使い勝手が良いように設計し、それでいて環境に配慮したものにしています。1997年にランドー社とともに名前を決めましたが、社名に環境を入れましょうということでできた名前がAPA(Always Pleasant Amenity)です。アルファベット3文字で覚えやすく、インターネットでの検索が主流の時代にも即しており、この名前がAPAの成長の原動力を担っているのではないかと考えています。

また、今般世界戦略にとりかかるにあたってホームページや広告宣伝を行う際に、ただ日本語を中国語や英語に変換しただけでは訴求力が弱いので、その国の文化に根ざしたものを作ることにしました。J Walter Thompson(JWT)という世界最大の広告会社とともに作成したキャッチコピーが”You’ll be back”です。一度APAホテルの便利さを利用したら、また利用したくなるという意味です。

北米と世界展開における
ビジョンとは?

今回カナダの案件を購入したことにより、北米でのホテル買収に関する情報が集まるようになりました。情報を元に思い切って購入すれば早期の100店舗は達成可能ですが、我々のコンセプトに合わないものは買えませんし、一つ一つきっちり運営した後にアジアに進出していきたいと考えています。また、東京近郊であっても範囲を広げればまだまだ何百ものホテルを作る機会がありそうです。しかしながら、世界での認知を考えたら北米が良いかと考えております。また成長性を考えればアジアに向く必要があります。色々なことを考えれば、確実に拡大しながらブランドを高めることが高収益につながりますが、やはり理念が大事です。

PROFILE
元谷 外志雄
アパグループ代表。石川県小松市生まれ。1971年に住宅会社の信金開発(現アパグループ)設立。84年にホテル事業に進出。2015年より 海外進出、2016年9月時点で北米エリアに40軒のホテルを展開している。

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