ツアーガイド&ツアーコーディネーター
井手野下 司

文/福田恵子 (Text by Keiko Fukuda)

 高度な資格や専門知識、特殊技能が求められるスペシャリスト。手に職をつけて、アメリカ社会を生き抜くサバイバー。それがたくましき「専門職」の人生だ。「天職」をつかみ、アメリカで活躍する人たちに、その仕事を選んだ理由や、専門職の魅力、やりがいについて聞いた。

「ホスピタリティーの姿勢忘れず努力重ねる 『楽しかった』の一言で疲れも吹き飛ぶ」

 アメリカに来たのは23年前です。日本では英語の専門学校を卒業後にホテルのフロントで働いていました。働いてお金を貯めてアメリカに留学するのが目的でした。こちらの学校を出ると1年間就労可能なOPTというビザが出ます。そのビザを利用して、日本語新聞の求人広告で募集していたロサンゼルスの旅行会社に就職しました。もともと旅行好きでしたし、楽しくなってやりがいを感じました。ずっと続けたいと思ったのですが、ビザに限りがあったので、カナダでツアーガイドとして働き始めました。カナダは比較的グリーンカードの取得が簡単だったのです。

 カナダではスノーボーダーやスキーヤーをウィスラーに連れて行ったり、夏はビクトリアに行ったりして働きました。でも、やはり気候がいいロサンゼルスに戻って来たくなりました。日系の大手旅行会社に転職することになったので、専門職ビザもすぐに取れ、1999年に改めてここでツアーガイドとして再始動しました。

 ガイドの仕事は、一にも二にもいかにお客様に満足していただけるか、ということに尽きます。ホスピタリティー、おもてなしの心を持っていて、そのために努力を怠らなければ誰でもできる仕事だと思います。

 最初にアメリカで働いた会社での先輩の言葉が、今でも私の座右の銘です。「ツアーガイドはガイドするだけでなく、エンターテイン、つまりお客様に喜んで帰っていただくことが大事だ」というものです。最後、帰る時に一言「楽しかった」と言ってもらえるだけですべての苦労も疲れも吹き飛びます。

 地元のロサンゼルス近郊だけでなく、遠方までバス移動することが多く、体力的には確かにきついです。つい2日前もラスベガスに行って、そこでお客様をバスに乗せて、グランドサークルを回った後、サンディエゴ経由でメキシコのティファナに行き、昨日サンディエゴでお客様をドロップオフしてきました。

 私も体力を使いますが、お客様は団塊の世代が多いので、もっと大変だと思います。だからこそ、目を配らないといけないし、危険なことがないように常に注意をしています。私自身、体調管理のため食事には気をつけています。お客様と同じものをツアー中に食べていたら、肉、ポテト、肉、ポテトの繰り返しで太ってしまいます。時間ができたら走ったりもしますし、マッサージ器をツアーに携帯し、ホテルの部屋で体の凝りをほぐしたりもします。

 実は大手旅行会社を3年前に辞めた後、別の職種に転職したこともありました。その時に改めて実感したんです。自分にはツアーガイドの仕事しかないということを。転職先の社長さんにはお世話になりましたが、半年ほどで退職して、今度はフリーランスのツアーガイドとして働き始めました。自分が生きていくにはこれしかないな、と今も心からそう思っています。

 フリーでやっていて大変なことはおかげさまで特になく、本当に周囲の人々には恵まれていると感謝する日々です。仕事のオファーをいただけば、特別に体調が悪くない限りは休みも挟まずにツアーに出るようにしています。

同じ景色は二度とない 常に一期一会の気持ち

 何度も同じ場所を巡って飽きないかと聞かれることもあります。それはありがたいことにありませんね。毎回、天気が違えば景色も違って見えます。雪景色のグランドキャニオンなどは本当にすごい感動を与えてくれます。仕事でありながら、私も「お客さん目線」で楽しめます。そして何よりお客様が毎回違います。お客様が現地に行くことは二度とないかもしれないのです。ですから、一期一会の気持ちで一緒に過ごしています。

 それでも千人のお客さんがいたら1人くらいはクレームをされる人がいます。一生懸命、プロのガイドとして努めているのに残念です。悔しいし、つらいです。そういう時に笑顔で流せればいいのでしょうが、私はがっくりときてしまうんです。とにかくずっと勉強していくしかありません。

 昨日もお客様と別れ際、「次もアメリカに来るから、その時もまた、司さんにお願いしたい」と言っていただきました。嬉しかったです。それがパワーの源です。

 10年後もアメリカを駆け巡って、日本からのお客様を相手に説明しているんだろうな、と想像しています。できれば自分の分身のような後輩を育ててみたいです。私が新人時代に先輩にそうしてもらったように、後輩にも「ツアーガイドは、いろんな経験が積める、夢が感じられて、人に夢を与えられる仕事だ」ということを教えたいです。

Tsukasa

My Resume
●氏名:イデノシタ・ツカサ(Tsukasa Idenoshita)
●現職:ツアーガイド
●前職:ホテルのフロント(日本)
●取得した資格:California Driver License Class B
●ビジネス拠点:カリフォルニアを中心にネバダ、アリゾナなど西部
●その他:趣味はゴルフ、スポーツ観戦。時間ができると、日本からのツアー客の話が理解できるように日本の情報番組をDVDで観賞。

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

この著者への感想・コメントはこちらから

Name / お名前*

Email*

Comment / 本文

この著者の最新の記事

関連記事

資格の学校TAC
アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 2022年4月12日

    大学の日本語クラス
    アメリカの大学の日本語クラスは人気がある。私自身、過去にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(U...
  2. 2022年4月10日

    家を遺す
    家の売買に関わる仕事を長年している。人それぞれ異なった理由でこの職業を選択するのだろうが、私...
  3. 大西洋岸に面したカナダのノバスコシア州にある小さな港町・ルーネンバーグ。赤、青、緑、黄色……...
  4. NFTを買う理由 NFTの購入方法は、日々さまざまな選択肢が追加されています。現在もっとも一般的...
  5. マインドフルネスとは? マインドフルネス(Mindfulness)=“今この瞬間” の心の...
  6. Q.周りに日本人がいない環境で乳幼児を育てています。日本語をどう育んでいくか不安です。 このご質...
  7. Q.海外に長く住んでいて、子どものアイデンティティが心配です。日本人として育ってほしいのですが…...
  8. 2年前に日本食品のオンラインストアをオープンし、2021年12月22日にはジョージア州アトラ...
ページ上部へ戻る