車のバックミラーやサイドミラーが、今後10年で劇的に変わりそうだ。
■コストを上回る利点
オートノマス・ビークル・テクノロジーによると、市場調査IHSマークイットは最新の報告書「Camera and Display Mirrors Report」で、高精細(HD)カメラとディスプレイの組み合わせが鏡だけを使った従来のミラーと置き換わるかこれを補完するようになり、燃費や航続距離の改善に貢献しながら可視性や安全性を高めると予想している。こうした技術は向こう10年で急速に定着する見込みだという。
後方の様子をカメラで捉え、ディスプレイに表示するリアビュー・ディスプレイミラーは、最初に使われて以来、視野が大幅に拡大し、後部座席の人の顔やピラーが邪魔にならないことでその便利さを証明している。視野が広がるとドライバーの快適さや注意力も向上する。
これを最初に導入したのはゼネラル・モーターズ(GM)で、2015年に高級車「キャデラック」部門で採用した後、「シボレー」にも拡大し、次は「ビュイック」モデルで提供する。他メーカーでは日産自動車が18年型「アルマダ」に搭載するほか、他社も後を追う予定だ。
リアビュー・ディスプレイミラーの年間生産台数は、日本や北米を中心に25年には180万個に近づくと予想されている。普及の大きな障害はコストだが、比較的安い従来のバックミラーからより複雑なカメラ・ディスプレイ・システムへの切り替えは進んでおり、多くの自動車メーカーは他社との違いを出せることや視認性の改善といった利点に引かれると考えられる。
サイドミラーの鏡の部分が小さくなるまたはなくなることで空気抵抗が下がり、燃費の向上も期待できる。何十年も試作車で新デザインを模索してきた設計者たちは新しい自由を歓迎し、今は規制当局者らもこの技術を支持し始めている。
■不可欠な機能の1つに
この結果、サイドビュー・ディスプレイミラーの市場も拡大し、IHS報告書は12〜24カ月以内には最初の生産が始まり、25年までに年間50万台近くの新車でサイドミラーがカメラ・ディスプレイ・システムに置き換わる可能性があると予測する。導入の方法は一通りではなく、計器盤のようなディスプレイを通した表示や従来のセンター・スタック・ディスプレイで表示される可能性もあるが、大半はドライバーが最もなじんでいる視線の動きに合わせてドアパネルかAピラーに設置される見込み。
運転支援の面では、カメラによる視認性強化はすでに一般的で、駐車アシストからホンダの「レーンウォッチ」に至る多くの技術で活用されている。25年には運転支援や自動運転システムのためにサイドミラー・カメラ・センサーを搭載した車が180万台以上生産される見通しで、このうち23%では従来のサイドミラーが完全になくなると予想される。
こうしたミラーの置き換えは、消費者が好む新しい魅力を追加し、自動車メーカーが車内の新しい場所で情報を提供する可能性を提供する。また、新参のサプライヤーにとっては車載カメラ・システム、ディスプレイ、システム電子制御ユニット(ECU)、ミラーといった需要に応える機会にもなる。IHSのジェレミー・カールソン氏は「この新技術は、次の段階の技術革新で『あれば便利な機能』という枠を超え、自分で運転するか自動運転かにかかわらず包括的な車載体験に不可欠な機能になる」と指摘する。(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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