共有オフィス運営ベンチャーのウィーワーク(WeWork)は、ソフトバンク・グループの出資を受けて積極的なマーケティングを展開している。
■2年契約なら家賃1年無料
ウォールストリート・ジャーナルによると、2010年に創業し、起業家らが共同で使えるオフィスを貸し出す事業を展開するウィーワークはこれまで、「同じような会社が増えれば新興業界の成長を助けられる」と考えて同業他社の存在に寛容だったが、最近は姿勢を一変させ、大胆なインセンティブを提供したりして他社からのテナント引き抜きに積極的になっている。
サンディエゴのウォルフ・バイエラス(Wolf Bielas)やニューヨークのボンド・コレクティブ(Bond Collective)といった中小の同業によると、ウィーワークは17年秋、「2年リースに契約すれば1年間は無料」という売り込みで大量のテナント獲得を図った。提示案があまりに寛大すぎるため、他社は太刀打ちできないという。
7万平方フィートの共有オフィススペースを持つワークハウスNYC(WorkHouse NYC)のデブラ・ラーセン氏の場合、ウィーワークの攻勢で「60件以上いるテナ ントのうち3件を失い、4件目を引き留めるために手数料の一部免除を余儀なくされた」という。同社の建物の前で「1年間家賃無料」のビラを配っていたウィーワーク社員を、ワークハウス社員が追い払ったこともあった。
ウィーワークはこの1年で少なくとも3社に対し、「we」や「work」といった単語が入った社名や語感の似た名前を使わないよう、訴訟や警告などの法的措置を取っている。
■成長ペースに疑問
こうしたウィーワークの動きは、同社の共有オフィススペースの需給バランスに関する疑問を生んでいる。17年夏、同社に31億ドルを出資したソフトバンクは 同社の価値を200億ドルと評価し、同社のスペースは創業以来毎年約2倍のペースで増え続け、テナントは17万5000件以上に拡大している。しかし、12カ月以上営業しているスペースの平均占有率は17年6月現在で90%と前年同月の97%から低下した。この間、ウィーワークはブローカー手数料値下げといったほかのインセンティブも拡大した。
ウィーワークの広報担当者は「大手、中小企業ともに販売は堅調で、テナントの入居率は高い。目標は世界的に成長する同社の共有オフィスサービスの利用をできるだけ簡単で魅力的にすること」と説明する。
ライバルを標的にしてシェア拡大を図る手法は、豊富な資金を得た新興企業の常套手段であり、特にウィーワークのような参入障壁の低い市場ではその傾向が強い。ウィーワークは、柔軟なスペースに独自のデザイン感覚を加えているが、 長期リースしたオフィスを改装し短期でサブリースするというビジネスは比較的真似しやすいため、競合は多い。若い労働者を中心に人気もあるため、米国ではここ数年で約4000件の小規模業者が生まれている。
ウィーワークのアダム・ニューマンCEOはライバルについて「彼らと友達やパートナーになりたいと思っており、できれば買収したい」と語る。一方、数カ所でウィーワークにスペースを貸している世界最大の不動産所有会社ブラックストーン・グループは、17年6月にロンドンの共有オフィス運営会社を買収している。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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