海外を含めた社員数を開示する企業が増えた結果、米国の大手国際企業がいかに外国の労働者に依存しているかが明らかになっている。
■ヘインズは88%が海外
ウォールストリート・ジャーナルによると、2008年の金融危機後に導入された金融規制改革(ドッド・フランク)法によって、上場企業はCEOと従業員の年間報酬(従業員は中間値)、およびそれらの比率を開示しなければならない。また、全世界の社員数も開示が義務付けられており、特に社員の年収中央値の算出に一部の海外労働者を含めない企業は、合計だけでなく国内外の内訳を示さなければならない。
近年は上場企業の4分の1が自主的に社員の国内外内訳を発表するようになっている。すでにCEOと社員の報酬比を公開しているS&P500企業は286社あるが、そのうち180社以上を見ると3分の1が国内外の雇用内訳を発表している。
その中には海外の雇用比率が非常に高い企業も多く、食品大手ケロッグは全体の59%に相当する約2万人を海外で雇用している。野菜・果物の輸入販売フレッシュ・デル・モンテ・プロデュースは社員の80%がコスタリカ、グアテマラ、ケニア、フィリピンに住んでいる。家電大手ワールプールの場合、17年の年収が会社の中央値だった社員はブラジルのフルタイム労働者(1万9906ドル)で、ボイラー製造のA・O・スミスでは中国の南京工場で働く時給労働者(1万7687ドル)だった。
アパレル大手ヘインズブランズでは、10年以降に全世界の雇用数は21%増加した一方、米国社員の構成比は下がった。海外社員の比率は、10年の5万5500人中85%から17年は6万7200人中88%に上昇した。18年3月に公表したジェラルド・エバンスCEOの年間報酬は958万ドルで、社員の年収中央値(5237ドル)の1830倍に上った。社員の多くはホンデュラスなどの供給チェーン施設で機械を操作しており、5人中4人は、中米、カリブ海地域、アジアなどで同様の仕事をしている。広報担当者によると、ヘインズは国際供給網のほとんどを自社で抱える数少ない上場アパレル企業として他社より詳細な情報を開示しており、多くの社員は低コストの国に住んでいるという。
■デリケートな問題
米国企業にとって、国内から開発途上国への雇用シフトは政治的に注意が必要な問題になっており、国内外の社員数開示には慎重になる企業も多い。商務省の統計によると、米国の国際企業は00〜15年に米国で430万人を雇用したが、海外ではそれを上回る620万人を雇用。15年の社員数は国内が2830万人、海外が1410万人だった。
10年に国内社員数の報告をやめたIBMのように社員の国内外内訳を開示しない企業も多く、海外の社員を増やしている企業の中には「人件費の安い国へ雇用を移しているのではなく消費地の近くで労働者を雇用している」と説明するところもある。
世界の180カ国以上で食品を販売するケロッグも、社員の半分以上を海外で雇用しており、まだ売り上げの大半は米国から計上しているが、近年は国内のシリアル販売の落ち込みを受けて何百人もの米雇用を減らしている。17年秋にCEOに就任したスティーブン・ケヒレーン氏の年間報酬は730万ドルで、社員の中央値(4万163ドル)の183倍だった。(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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