穀物価格が10年ぶりの高水準にある中、農産物の輸送コストも世界的に高騰しており、輸入に依存する市場の消費者に大きな打撃を与えている。
■ばら積み船は前年比2倍
ロイター通信によると、新型コロナウイルスのパンデミックを背景とする燃料費の上昇、船舶供給のひっ迫、港のターンアラウンドタイム(寄港から再積載、再出発までの時間)の延長などにより、米州や黒海の生産拠点から主要市場の消費者に穀物やオイルシード(油糧作物=油の採取用に栽培される作物)を運ぶばら積み船の運賃は2020年の約2倍に高騰している。
豪ナショナルオーストラリア銀行の農業関連エコノミスト、フィン・ジーベル氏は「食品バイヤーは長年、安い穀物価格と運賃を享受していたが、しばらくは輸送費の上昇が止まる気配がない」と話す。
輸送業界関係者によると、穀物の輸送コストは、オーストラリアから東南アジアが20年の1トン=15ドルから30ドルに、米西海岸北西部からアジアへは25ドルから55ドルに上昇。また黒海からアジアに小麦を運ぶ船は約35ドルから約65ドルに高騰している。
シンガポールの大手証券会社トレーダーによると、コストの高騰は燃料油とばら積み船の運賃上昇が原因で、新型コロナウイルスの検疫の関係で貨物の動きが遅れていることも影響しているという。
■動きの激しい農産物価格
一部の主要経済国でパンデミック後の経済が再始動する中、世界の食品価格は5月にこの10年以上見られなかった勢いで上昇し、食料輸入業者やインフレを抑制しようとする政策担当者に新しい課題を突きつけている。
さらに、トウモロコシや大豆といった主要農産物の価格は、北半球の残りの生育期を通じて上昇や変動を続ける見通しとなっている。シカゴのトウモロコシ先物価格は、世界的な需要の高さと米国内の需給ひっ迫で1年前から約90%も高騰しており、大豆はブラジルの干ばつで主要生産者の生産量が減って50%以上上昇、小麦も昨シーズン以来約30%上昇している。
■アジアのバイヤーを圧迫
農産物価格と運賃の高騰は、特に農産物消費量が最も多いアジアのバイヤーを圧迫している。中国は世界の大豆購入の半分以上を占め、日本は世界最大のトウモロコシ購入国の1つとなっている。世界第2位の小麦輸入国であるインドネシアの典型的な小麦購入業者にとって、黒海から5万トンの食用小麦を仕入れるコストは1年前から400万ドル上昇して約1500万ドルとなっており、輸送コストだけでも150万ドル上昇している。
また、農産物価格の変動の激しさも別の問題を提示している。コーンのベンチマーク先物は6月の最終週に10%以上上昇したが、翌週は天気予報で市場心理が変わり10%下落した。東南アジア全域で事業展開する製粉会社の調達責任者は「価格高騰で消費量が減っている。こういう市場でポジションを取ることは難しく、製粉業者は購入を減らしている」と話した。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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