新型コロナウイルスの感染流行が始まって以来、車の排ガス浄化装置(catalytic converter=触媒コンバーター)の盗難が全米で急増し、消費者や自動車販売店が自宅・店舗のセキュリティー強化を余儀なくされている。
オートモーティブ・ニュースによると、盗難を監視するため、夜の車内で67歳の誕生日を迎えた中古車ディーラーもいる。ミズーリ州ジャクソンで中古車販売店M&Bオートセールスを経営するマソード・バヤッティ氏は、すでに展示場の車から40個以上の触媒コンバーターを盗まれた。地元紙クラリオン・レッジャーによると、同氏は7月9日、敷地内に侵入しようとした何者かを銃で追い払った。
触媒コンバーター盗難の増加は、装置に使われている貴金属の高騰が背景にある。全米保険犯罪機構(NICB)によると、2018年には月平均108件ほどだった同装置の盗難は、19年には282件、20年には1203件へと激増。20年12月は単月で2347件以上の盗難が通報された。
USAトゥデイによると、21年は1~5月の部品盗難数が2万6000個近くに上っている。実に月間5000個のペースだ。04年式のホンダ「CR-V」を路上に駐車していたというシカゴ在住の女性は同紙に、パンデミック期間中に2度、触媒コンバーターを盗まれたと語った。
触媒コンバーターを盗まれた場合、車1台当たり数百~数千ドルの修理費がかかる。盗んだ側は、部品を金属回収業者に売れば1個当たり50~250ドルになる。CBSニュースによると、トヨタ「プリウス」などのハイブリッド車(HV)の触媒コンバーターにはその数倍の値段が付くという。通常、同部品は車の下に潜れば数分で切り離せる。
テキサス州ラポルテの自動車販売店では6月、三菱「アウトランダー」の新車の一群からひと晩で18個の触媒コンバーターが盗まれた。
テネシー州メアリービルでは、ドットソン・メモリアル・バプティスト教会が所有する複数のバンが短期間に2度も狙われた。ショーン・ウェントリー牧師は地元テレビ局の取材に「最初に2台から部品を盗んだ彼らがなぜ3個目を狙わなかったのかは分からない。そして2回目の盗難でも被害は2個だった」と話した。「あなたが何かを盗む時、特にそれが教会だったら、神の持ち物を盗んでいるということですよ」
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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